東日本大震災アーカイブ

各省横断でチーム 地域再生特別法、国会提出へ 政府方針

 政府は福島県が提案した地域再生の特別法の次期通常国会提出に向け、近日中に関係省庁間で具体的な協議に入る。13日に福島市の福島テルサで開かれた原子力災害からの福島復興再生協議会の幹事会で政府が示した。市町村の復興を支援するため、各省横断の職員チームもつくる。

 特別法制定に向け、県は産業集積や農林水産業の再生に向けた税制上、金融上の措置の制度化、除染など放射線影響からの環境回復、地域医療の確保や教育の充実などの特別施策の実施を盛り込むよう求めた。政府は課題となる部分などを詰め、来月開く幹事会で政府としての考えを伝える。

 政府による原発事故市町村復興支援チームは政府の復興対策本部と原子力災害対策本部の現地職員、各省の職員をメンバーに3チームつくる。避難区域や特定避難勧奨地点を抱える14市町村をチームごと担当し、復興の要望を聞き取るほか、法制度などをアドバイスする。

 内堀雅雄副知事は会議終了後、記者団の取材に対し、「関係省庁と率直な意見交換ができた。県としてもより具体的な提案ができた」と述べた。

郡山に事務所開設 原子力損害賠償解決センター

 東京電力福島第一原発事故をめぐり、東京電力と被災者の賠償交渉を仲介する「原子力損害賠償紛争解決センター」の福島事務所が13日、郡山市に開所した。東京都に続き全国で二カ所目。14日に業務開始する。同センターは被災者救済を迅速化するのが狙い。仲介委員となる弁護士らが双方に和解案を提示する。事務所には文部科学省と法務省の職員ら5人が常駐する。

 開所式は文部科学省の藤木完治研究開発局長、浅井嗣夫所長ら関係者約40人が出席し、センターの看板を除幕した。

 福島事務所は郡山市方八町1丁目2ノ10、郡中東口ビル2階。時間は午前9時から午後5時まで。土、日曜、祝日は休み。問い合わせはフリーダイヤル(0120)377155へ。

■役割・流れ 浅井所長に聞く 被災者と東電の仲介役

 原子力損害賠償紛争解決センターの福島事務所長に就いた浅井嗣夫所長は13日、福島民報社のインタビューに応じ、役割や解決までの流れなどついて語った。

 -福島事務所の役割は。

 「被災者の賠償を円滑、迅速、公正に解決する公的機関。仲介委員や調査官に任命された弁護士が被災者と東京電力に和解案を提示する。福島事務所は主に、仲介に必要な申立書の説明や仲介場所として機能する」

 -東京電力が賠償基準を示した。

 「条件、金額に納得のいかない、または基準に示されていない場合も考えられる。自主避難や仮設住宅などの暮らしの中で、個別の問題が生じている。賠償が必要と感じた場合は、抱え込まずに相談してほしい」

 -事務所は現在、郡山市と東京都のみだが。

 「被災者の避難先は全国に広がっている。各自治体や都道府県の各弁護士会との連携が必要だ。申立書の説明会、仲介の場所も踏まえ、今後、県民が利用しやすいように状況に応じて柔軟に対応する」

 -和解までの流れは。

 「事務所やホームページ、公的機関で申立書を入手できる。提出先は原則として東京事務所。受理されれば、3カ月程度で和解となる。期間を過ぎても、仲介を打ち切ることはない」

 -センターをどう活用してほしいか。

 「賠償請求が進まず、最後に頼る手段といったイメージではなく、迷わず声を上げてほしい。件数が多ければ関係する諸官庁、内閣側から早めの判断を仰ぐことができる」

■あさい・つぎお 三春町出身。中央大法学部卒。裁判所職員を経て昭和58年に弁護士登録し、平成19年から1年間、県弁護士会長を務めた。64歳。