陸上自衛隊が楢葉、富岡、浪江、飯舘4町村の役場で取り組む除染活動のうち、富岡、浪江両町役場庁舎の作業が8日、報道陣に公開された。高い放射線量のため、作業の変更を余儀なくされるなど不測の事態も待ち受けていた。現場の模様を取材した。
東京電力福島第一原発から南へ約9キロ離れた富岡町役場の平均放射線量は毎時7・7マイクロシーベルトで、自衛隊が除染する4カ所の役場の中で最も高い。隊員約300人が重機などで芝生部分の表土を除去している。作業が進んだ場所の放射線量は3分の1程度に減ったという。
ただ、作業は常に変更を迫られている。町役場の3階テラスにある砂利は当初、洗浄による除染を想定していた。しかし、放射線量が下がらず作業直前に砂利を取り除くことになった。量も想定より多く、前日に始まった作業は2日目の8日までずれ込んだ。
福島第一原発から約8キロ北にある浪江町役場周辺は紅葉も終わりに近づき、冬の色合いを増していた。人けのない町の静寂を破るように、側溝の汚泥をすくい上げるスコップや草を刈り取る機械の音が響く。
敷地内の放射線量は毎時1マイクロシーベルト前後。隊員約150人が側溝のカバーを一つ一つ外し、中にたまった落ち葉や土をかき集め、土のう袋に詰める。これまで行方不明者の捜索を続けてきた隊員は防護服を苦にする様子もなく、無駄のない動きで作業を進めていた。
福島市に駐屯する第44普通科連隊の森脇良尚連隊長は「郷土に根付いた部隊として誇りを持って取り組んでいる」と力を込めた。相双地方出身の隊員も多く、古里への強い思いも伝わった。
6号国道をバスで移動中、福島第一原発の排気筒が遠くに見えた瞬間、線量計が一斉に警告音を発した。手元の線量計の数値は毎時20マイクロシーベルトを超えた。自衛隊の活動は2週間程度の予定だが、高線量地域の除染は誰が担うのか。そして、どのくらいの期間を要するのか。国策として除染に取り組む必要性をあらためて強く感じた。
(カテゴリー:福島第一原発事故)