東日本大震災アーカイブ

【住民賠償指針会議】「線引き」平行線 対象外市町村「実態把握して」 文科省「公正に決めた」

会議では、対象外となった市町村の担当者から「線引き」の根拠に関する質問が相次いだ

 避難指示区域以外の県民に対する賠償指針をめぐる市町村の担当者会議は12日、福島市で開かれ、賠償の対象外となった県南や会津地方の市町村の担当者から「現地の実態を把握しているのか」などの疑問や不満が噴出した。これに対し、原子力損害賠償紛争審査会を設置する文部科学省は「専門的な立場で公正に決めた」などと回答し、話し合いは平行線のまま。一方、県は全県民の賠償を国に求めるため、被害の実例把握に乗り出し、対象外の市町村の自主避難者は「精神的苦痛は県民全員が同じ」と語気を強めた。

■深まる溝
 福島市の杉妻会館で開かれた会議。文科省原子力損害賠償対策室の田口康次長は、県内48市町村と県市長会、県町村会の担当者、県の鈴木正晃原子力損害対策担当理事ら約100人を前に賠償指針の内容を説明し、「最終的には原発からの距離や避難区域との近接性、自主避難の状況などを総合的に勘案した」「指針は賠償を円滑に進めるため」などと理解を求めた。
 しかし、出席者からは判断の根拠を問う質問が飛んだ。塙町の担当者は「話を聞いていると、(県全域に賠償する考えはなく)線引きすることが前提にあったのではないか。審査会は一度でも現場に足を運んだか」と詰め寄った。田口次長は「(専門委員が)70人近く現地調査した」と説明した。
 棚倉町の担当者は「原発からの距離などを総合的に判断し、点数づけをしたのなら(結果を)教えてほしい」と質問。しかし、十分な答えは得られず、溝は深まるばかり。 猪苗代町の担当者は「町民からの問い合わせが相次いでいるが、今日の説明では町民が納得しない。町民の立場で、町民が納得する説明をあらためてしてほしい」と訴えた。田口次長は「われわれとしても皆さんの声を聞いて、納得できる説明を考えないといけないと思う。申し訳ない」と声を振り絞った。

■事例どれだけ...
 県は全県民を賠償対象とするよう国にあらためて求めるため、今回対象外となった市町村の自主避難者らの精神的被害や引っ越しにかかった費用など、細かな実態を集約する。既に各自治体に文書で照会しており、年内にはまとめて国に提出する予定だ。県の担当者は「各市町村の協力を得ながら、スピード感を持ってやっていく」と話す。
 ただ、国に効果的にアピールするには、できる限り多くの事例が必要になり、どれだけ集められるかは不透明だ。
 棚倉、矢祭、塙、鮫川の東白川郡4町村では、指針見直しを求める署名活動が12日までに始まった。
 西白河郡の中島村でも署名活動を始める方針。村の担当者は「周辺自治体でも取り組みが行われるようだ」としており、さらに活動が広がりそうだ。

■苦痛は皆同じ
 賠償指針で対象外となった白河市などから県外に自主避難している住民は「なぜ線引きするのか」「精神的苦痛は県民全員が同じ」と憤る。
 白河市の城戸明子さん(33)は会社員の夫(33)と離れ、5歳と1歳の男児を連れ、10月に長野県松本市に自主避難した。放射線量が比較的高い県内での子育てに精神的に疲れ果て、やむを得ず被災者の受け入れ態勢が整っている同市を選んだ。「放射線に苦しんでいるのは福島県全体。なぜ線引きするのか理解できない。対応が冷たい」と不満を口にする。
 妻(35)と女児(1つ)を新潟県に自主避難させている西郷村の男性(40)は「子どもを安心した環境で育てるため悩みに悩んで県外避難を決めた」と打ち明ける。「別居に伴う支出増と精神的苦痛は県内どこの家庭も同じはず」と審査会に不信感を募らせた。

【背景】
 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は6日、避難指示などが出ていない地域から自主避難した住民と、とどまった住民への賠償額を一律8万円、放射線量による不安や影響が大きい18歳以下の子どもと妊婦は40万円とする賠償指針を決めた。「一定の放射線量が計測され、被ばくへの不安を感じて当然と考えられる地域」で線引きし、県北、県中地方の全域と浜通りの一部の23市町村を対象としたが、県南、会津、南会津地方の26市町村は対象外となった。指針では、対象外の市町村についても個別の事情を勘案して損害を認めることがあるとしており、国は今後、判定のための基準を作る方針。

カテゴリー:3.11大震災・断面