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【攻防 電力マネー5】国と地方思惑合致 「脱原発」受け岐路に

東北電力浪江・小高原発の建設予定地周辺。浪江町、南相馬市は立地を前提にした交付金の申請を見送った

 「定められた目的に沿っていなければ、交付金は認められない」
 「発電所が立地する地域の振興のためだ。分かってほしい」
 東京・霞が関にある経済産業省資源エネルギー庁の一室。平成14年、県電源地域振興グループリーダー渡辺日出夫(62)=福島市=は国の担当者に食い下がった。
 渡辺は電源三法交付金を使った事業の申請に出向いた。交付金は環境保全や福祉サービスなどのソフト事業を対象外としていた。町おこしのイベントなどに交付金を使えるように何度も繰り返し説明した。だが、国に聞き入れてもらえない事業が多かった。

■新たな恩恵
 間もなく状況は一変する。国は15年10月、6種類あった交付金を「電源立地地域対策交付金」に統合し、使い道を広げた。
 国には思惑があった。14年に国の「地球温暖化対策推進大綱」がまとまった。二酸化炭素削減に結び付けるエネルギー政策を進めるには、原発を増やすことが不可欠とされたためだ。だが、11年の東海村でのJCO臨界事故や東京電力のトラブル隠しなどの影響で、原発の新設や増設の計画は滞っていた。交付金の使い勝手を良くし、原発建設を進める狙いがあった。
 交付金制度の変化は立地地域に新たな恩恵をもたらした。中でも、地場産業の育成や人材育成など、地域を活性化させる事業に利用できるようになった。
 渡辺は15年、富岡町に設けられた県原子力等立地地域振興事務所の初代所長に赴任した。かつて自らが国に折衝した新たな交付金制度を使い、地元町村の職員や地域の団体のリーダーと一緒に、スポーツ合宿誘致など新たな事業のアイデアを出し合った。
 10年近くが過ぎた今、渡辺は双葉地方と再び、関わりを持つ。県を退職後、郡山市のビッグパレットふくしまの館長を務めている。東電福島第一原発事故の直後から、ビッグパレットの職員と力を合わせ、避難者を受け入れた。「縁ある双葉地方が1日も早く復興してほしい」。そう願い続ける。

■対等の立場
 「事故前と同様の対応はできない。交付金は辞退すべきだ」。7月初旬、南相馬市長、桜井勝延(55)は職員に指示した。
 市内小高区と浪江町にまたがる地域には、東北電力浪江・小高原発の立地計画がある。辞退した電源立地等初期対策交付金は近年、約5000万円が市に入り、保育所の運営などに活用してきた。市は広報・安全等対策交付金の受け取りも辞退する方針を固めた。浪江町も9月に初期対策交付金を申請しないことを決めている。
 桜井は「『脱原発』の意思表示だ。国と対等の立場で議論するには交付金を受けられない」と語る。
 南相馬市議会は5日、原発の建設中止を決議した。浪江町議会も21日、44年前に出した誘致決議の白紙撤回を決議した。
 交付金を介した国と立地地域の関係は、大きな岐路に差し掛かっている。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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