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【「重点調査」指定市町村】除染計画に苦慮 16自治体策定進まず 難しい範囲選定

 除染作業を急ピッチで進めることを目的とした「放射性物質汚染対処特措法」の全面施行が1月1日に迫った。しかし、同法に基づく「汚染状況重点調査地域」に指定が決まった複数の市町村は、除染計画作りに苦慮している。指定を受ける40市町村のうち、策定済みと今月中に策定するのは合わせて24市町村で、16市町村は策定が進んでいない。計画は国の財政支援を受ける前提となるが、除染地域の選定が難しい上、有効な放射線量の低減方法を見いだせないためだ。自治体からは国、県に強力な支援を求める声が上がる。

■住民にどう説明

 「線量の高低にかかわらず全世帯で除染をする予定だった。財政支援で線引きをされても、住民に説明できるかどうか」。須賀川市の担当者は、環境省の除染ガイドラインを手に厳しい表情を見せる。
 市は8月に発表した市放射性物質除染方針で、約2万5000の全世帯で除染を行うことを宣言した。市内全域から一刻も早い除染を求める意見が相次いだためだが、肝心の除染計画を作れずにいる。環境省が打ち出した財政支援の対象地域は放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト(年間1ミリシーベルト)以上だが、須賀川市内にはこの基準を下回る場所は少なくない。「数字では割り切れない住民感情があることを国は理解していない」と嘆く。
 同省水・大気環境局総務課は「年間1ミリシーベルト以下の地域は、県の除染補助事業で対応してほしい」とする。しかし、県の補助事業は一集落当たり50万円が上限。県が除染計画用に示した一戸建て住宅の除染作業単価は70万円と開きは大きい。担当職員は「安全・安心のため市内全域の除染は不可欠。線量が低い地域も国の支援を求めたい」と訴える。

■ずれ込み

 郡山市は今月中の除染計画策定を予定している。しかし、年度内に予定していた市内全域の本格的な除染作業は来年7月にずれ込む見通しだ。国、県の除染モデル事業の結果がまだ出ておらず、環境省が除染方法をまとめた除染ガイドラインにも効果は記されていない。
 しびれを切らした市は来月から住宅の除染方法検証に乗り出す。線量が比較的高い池ノ台地区でモデル住宅を選び、さまざまな手法を試す。市原子力災害対策直轄室の担当者は「国や県を頼ってはいられない。どんな方法が有効か、自ら試すほかない」と力を込める。


仮置き場確保 難航 除染 人手も足りず

 除染計画の策定が進まなかったり、策定しても実際の除染準備が滞っているのは、除染廃棄物の仮置き場の確保が難航していることが最大の要因だ。実際に除染作業に入ったのは福島、伊達、川内など6市町村の一部地域にとどまる。ほとんどの市町村は手付かずで、人的支援を求める声も上がっている。

■手詰まり

 湯川村には国が仮置き場の設置を市町村に認めた国有林がない。村内のほぼ全域が水田で、仮置き場を受け入れる農家は今のところ現れていない。村の担当者は「手詰まりだ。まだまだ除染どころの話でない」と天を仰ぐ。
 17ある行政区単位で仮置き場を設ける方針の大玉村では、4つの行政区で場所を確保した。しかし、残る13行政区は住民の理解が得られず、未定のまま。村は村管理の仮置き場を1つ設置したが、容量は限られる。村職員は「これ以上、どうやって場所を探せばよいか。先行きは全く見えない」と頭を抱える。いわき市は除染計画は作ったものの、依然として仮置き場は全くの白紙状態だ。
 県除染対策課は「設置場所選定はあくまで市町村か除染対象地域の行政区などの役割」とする。一方、細野豪志環境相兼原発事故担当相は「市町村の苦労は十分理解している。国としても専門家派遣などで協力したい」とするが、明確な解決策は示されていない。
 同課によると、市町村が開く住民説明会では決まって、「予定通りに中間貯蔵施設ができるのか。仮置きがそのまま処分場になるんじゃないか」との質問が飛び交うという。

■早計

 会津地方では三島、会津坂下、会津美里、湯川、昭和の5町村が汚染状況重点調査地域の指定を受け、計画に基づく除染は来年4月以降になる見通しだ。
 積雪による放射線量への影響をつかめないためだ。雪解け水によって田畑や住宅周辺の放射性物質が移動したり、土壌に沈殿してしまう可能性も懸念され、各市町村とも現時点で除染に着手することは早計と判断している。
 これに対し、会津坂下町の農業小熊繁三郎さん(61)は「春の水田がどうなるのか心配。町も手探りの状態なのは理解できるが、できるだけ早く計画を示してほしい」と訴える。
 環境省や県は積雪の多い地域向けの除染マニュアルを示していない。このため、会津地方の各町村はそれぞれの計画に除染を進める上での雪対策を盛り込むことができず対応に苦慮している。

■仕事山積み

 東日本大震災で大きな津波被害を受けた新地町。今月中の策定を予定しているが、実行に移すには程遠い。町総務課の担当者は「除染まで手が回らない」と現状を訴える。
 行政改革の一環で職員削減に取り組んだ結果、職員数は10年前より10人ほど少ない123人となった。震災以降、業務量が増え続け他県からの職員派遣で急場をしのいできた。住民から要望の多い除染関連の作業では、計画策定に加え、仮置き場の選定、業者への発注書マニュアル作りなど仕事が山積みだ。
 担当者は「これから復興工事が本格化する。現状の人員では除染作業が進まなくなってしまう」と国、県に人的支援を訴える。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故で飛散した放射性物質を取り除く除染を強力に推進するための「放射性物質汚染対処特措法」が1月1日に全面施行される。環境省は今月19日、放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト(年間1ミリシーベルト)以上の地域がある県内40市町村を、除染作業を行う上で国が財政負担する「汚染状況重点調査地域」に指定すると発表した。このうち、12市町村が除染実施計画を策定。12市町村の計画は今月中にまとまる。残る16市町村は除染地域の選定、汚染廃棄物の仮置き場確保に手間取るなどして策定作業が進んでいない。政府は平成24年度予算案に除染費用として3721億円を計上した。警戒区域、計画的避難区域など国直轄で行う除染に2677億円、除染実施計画を策定した市町村の除染には1042億円を充てる。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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