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【攻防 電力マネー7】新税導入、国は抵抗 県歳入の大きな柱に

核燃料を原子炉に入れる作業。核燃料税はこの段階で課される(東京電力提供)

 「核燃料税は福井県だけの特例です」。福島市の元県職員平原正道(76)は、税務課長補佐だった昭和51年春ごろ、東京・霞が関の自治省(現総務省)で、担当者からこう告げられた。全国で初めて核燃料税を導入した福井県に続こうと、相談に訪れていた。
 核燃料税は、県や市町村が独自に課税できる法定外普通税の1つに位置付けられる。ただ、当時は国の許可(現在は同意)が必要だった。福井県は、一部の原発が建設時期の関係で電源三法交付金の対象から外れる事態が起き、核燃料税はこの救済策として許可されたと言われた。
 自治省の担当者は「決まった様式に沿った申請内容でなければ、受け付けられない」と説明した。平原が様式を尋ねても、答えは「何も教えられない」とにべもない。様式が分からなければ、申請にどんな準備作業が必要かも分からない。事実上の門前払いだった。
 平原はその足で福井県に向かった。「出張命令」を受ける時間も惜しんだ。だが、その先を越して自治省は福井県に口止めしていた。「他県の申請は受けない。関係書類は絶対に見せるな。参考となる話もしないように」
 平原ら本県の担当者は県東京事務所で作戦を練り直した。人脈をたどって水面下で福井県側と話し合いを進め、申請書類の様式を非公式で入手した。

■長い歴史
 県は東京電力への働き掛けを同時並行で進めた。東電という特定の事業者だけに課税する制度であるため、自治省は「納税者」の了解を許可条件の1つに挙げた。
 「会津の水力発電以来、福島県にはずっと世話になってきた。お役に立ちたい」。本県と東電の間には猪苗代湖や尾瀬、只見川の水利用などをめぐって、明治時代以来の長い歴史があった。東電は新税に理解を示し、福井県に原発を持つ関西電力を通じて情報収集に当たった。
 いったん手続きが始まると、大きな問題は起きなかった。県が定められた様式に沿って申請書類をまとめると、自治省も断りようがなかった。52年10月28日、大臣の許可が下りた。福井県のほぼ1年後だった。

■自由度高い
 それから10年近くたった。人事課長に就いた平原は、上司の総務部長と一緒に東京で開かれた会議に出席した。休憩時間に奈良県の幹部が近づいてきた。当時進んでいた福島医大の移転・改築計画が話題に上った。
 同様に県立医大を持つ奈良県も施設の老朽化に直面し、財政難で改築できない悩みを抱えていた。総務部長が誇らしげに言った。「うちには核燃料税がありますから」
 核燃料税は、国から地方に回る地方交付税の計算基準に含まれていない。このため、核燃料税の税収が増えても、地方交付税を減らされる心配はない。しかも、使い道を県が判断できた。国が指図する電源三法交付金などに比べ、県にとっては大きな利点があった。県の歳入の欠かせない柱になっていた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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