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【来年度政府予算案】被災地の声 届かず 計上見送りに怒り 18歳以下医療費無料、通学費補助...

 閣議決定された平成24年度の政府予算案で、本県が強く要望していた18歳以下の子どもの医療費無料化や、県立のサテライト校に通う高校生の通学費補助制度など生活に密着した事業費の計上が見送られた。「原発事故の被災地の思いはなぜ霞が関に届かないのか」。子育てしやすい環境整備を整えることが復興への原点とする県などの関係者に不満といら立ちが募る。

■特別扱い

 18歳以下の医療費無料化は佐藤雄平知事の念願だった。年間90億円が必要となり、本県の財政規模では捻出が難しいため野田佳彦首相に直談判した。首相は検討を約束したが、結果は「ゼロ回答」。県の落胆は大きい。
 原発事故後、放射線の影響を懸念し子どもたちの県外避難が止まらない。県は18歳以下の少なくとも約1万3000人が県内を離れているとみている。県土再生に向け子どもの流出防止は緊急課題で医療費を行政が全額負担することで全国で最も子育てしやすい環境を整える狙いがあった。
 「財務省の壁は厚く、切り崩すことはできなかった」と県幹部は唇をかむ。予算要求の過程で医療費無料化の意義を熱心に主計官に説いたが、返ってきた答えは「原発事故と医療費無料化の因果関係が分からない。なぜ、福島県の子どもだけ特別扱いするのですか」。幹部は目の前が真っ暗になった。
 私立保育所が行う園庭の表土除去への全額補助も見送られた。線量が毎時1マイクロシーベルト以上では4分の1、毎時1マイクロシーベルト未満では半額の自己負担が今後も残る見通しだ。私立学校・幼稚園は既存の経営支援事業との組み合わせで自己負担がなくなる方向のため、県は私立保育所への対応も求めたが「なしのつぶて」。県保育協議会の川口孝司会長(会津若松市・のぞみ保育園長)は「乳幼児の健康には、気を使うべき。なぜ保育所への補助が認められないのか」と憤る。

■国策なのに

 「原発事故は国策が招いた事故。避難した生徒の通学費などをなぜ国は制度化して支払わないのか...」。県教委の担当者は、文部科学省の対応に不満をあらわにする。
 原発事故の避難区域設定を受け、県立高のサテライト校には、遠方から被災した生徒が通う。保護者からの通学費補助の要望で、県は今年度、自主財源で約2億8500万円を予算化した。
 県は当然、24年度以降は国が国庫支出金交付制度を設けると期待を込めてそろばんをはじいていただけに、ショックは大きい。文科省財務課は「福島県の高校生に対しては奨学金制度を設けるなど、被災地の要望に添った内容を事業化している」と説明している。
 あるサテライト校の校長は「週末に寄宿舎から帰宅するという親子の楽しみや生きがいを国は理解してくれないのか」と語気を強める。


国保財政の破綻懸念 医療費補填 制度化されず

 政府が閣議決定した平成24年度の一般会計予算案には、県と同様に市町村の要望も十分、反映されたとは言い難い。急増する国民健康保険制度(国保)の医療費への補填(ほてん)の制度化は見送られ、国保財政の破綻を懸念する声も上がっている。

■悪化

 南相馬市は国保の医療費が急増している。東京電力福島第一原発事故で国保加入者が前年より2250人増えたことに加え、避難区域などの国保加入者の医療機関の窓口負担が無料になった影響だ。
 市が一時負担する10月分の医療費は5億4240万円で、窓口負担が無料になった分を考慮しても前年同期の1.5倍だ。市はこれまで、県市長会などを通じて国保医療費が急増した分への財政支援を求めた。しかし、厚生労働省に願いは届いていない。
 被災者のため24年度、国保税の値上げは避けたいが、国の支援がない場合、今後の国保財政運営は厳しくなる。一般会計から国保特別会計への繰り入れなどで、復旧の予算全体への影響が出る可能性もある。「窮状」は厚労省国保課にも伝わっているが、担当者は「被災地の状況を見て対応したい」と述べるにとどまっている。

■巨額

 野田佳彦首相は原発事故の「ステップ2」完了を伝える記者会見で、全身の内部被ばく線量を測るホールボディーカウンターを5台追加購入する方針を示した。しかし、県内市町村による独自の導入に対する補助は見送られた。「小さな町村にこそ国の手厚い支援が必要だ」。桑折町企画環境課の職員は訴える。
 県内での内部被ばく検査は順番待ちの状態が続いている。北海道や東京都まで受診に出掛ける町民も出ているため、町は12月定例町議会でホールボディーカウンターの購入を決めた。予算は5000万円。町の財政規模では大きな道路事業に匹敵する額だ。
 さらに、専門スタッフの人件費や維持費などで年間数100万円の出費が必要となる。全て自主財源で賄えば、復興事業の予算化などの影響も懸念される。
 県市長会は「自治体からの要望を踏まえ、政府の対応が不十分な分野の事業化を引き続き求めたい」としている。

【背景】
 24日、閣議決定された国の平成24年度一般会計予算案の歳出は90兆3000億円で、過去最大だった前年度に比べ2.2%減となった。東日本大震災の復興費用に充てるため3兆7000億円の特別会計が設けられた。本県関係では東京電力福島第一原発事故による放射性物質の除染費、汚染廃棄物処理費など放射性物質対策に1兆1000億円が計上された。福島第一原発1~4号機の廃炉に伴い減額される電源立地地域対策交付金の補填措置として49億円、健康管理・健康調査費に19億円を確保した。一方、県は震災、東京電力福島第一原発事故からの再生を目指し、国への復興事業の予算化を繰り返し要望。医療保険や介護保険で、原発事故による避難区域の利用者負担を減免する財政措置が延長されることになったほか、少人数教育充実に向けた教職員の増員も反映された。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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