東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を受けて、全国の民俗芸能研究者らでつくる民俗芸能学会(山路興造代表理事)は「福島調査団」を組織し、今月から県内の無形民俗文化財の被災調査に取り組む。長年継承されてきた祭りや郷土芸能、伝統行事は、震災や原発事故からの復興に取り組む住民や古里を離れた避難者が心をつなぐシンボルとなるため。浜通りを中心に被災状況を調べ、復興に向けた対策を検討する。
調査は、文化庁の平成23年度「地域の文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」として400万円の補助を受けた。25年度まで3カ年で実施する予定だ。
調査団は団長の懸田弘訓さん(県文化財保護審議会委員)、副団長の小島美子さん(国立歴史民俗博物館名誉教授、福島市出身)らの専門家10人で構成。初年度は被害の大きな浜通り13市町村を手分けして調べる。
民俗芸能の伝承者・指導者が被災や避難をしたり、津波で道具が流されたりしたなどの状況を把握し、復活・継続の手だてを探る。必要に応じ国や関係団体への補助金申請などを助言。関係者が避難しているケースが多いため行政機関などにも情報提供を呼び掛ける。
懸田さんによると、浜通りには神楽や田植え踊り、海に関する神事など多くの無形民俗文化財や貴重な行事が残っていた。懸田さんは「祭りや伝統行事は地域の心のよりどころであり、復興の精神的な基盤となる。宮城、岩手両県では同様の調査が進んでおり、本県も早期に対策を考える必要がある」と話す。
調査団は7日に福島市のアオウゼで初会議を開き、調査地域の分担などを協議する。
■県内、相次ぐ継承途絶 把握と支援が急務
県教委が平成22年度にまとめた県内の民俗芸能の継承調査では、民俗芸能1205件のうち、全体の3割を超す439件の継承が確認されなかった。
このうち、浜通り地方は後継者不足などの問題で、579件のうち、田植え踊りや手踊りなど175件の継承が途絶えていた。
震災後、県教委には津波などで踊りや祭りに使う道具や衣装の流失、避難による地域住民の離散など民俗芸能の継続が困難な状況が報告されており、早急な実態の把握と支援策が求められている。
()