東日本大震災アーカイブ

新成人の思い出を手助け なみえ美容二本松店、仮設住宅の共同店舗

新成人が着付けに訪れた安達運動場仮設住宅のなみえ美容二本松店

 県内各地で成人式が行われた8日、二本松市の安達運動場仮設住宅にある「なみえ美容二本松店」は、振り袖に着飾る新成人が相次いだ。共同店舗で営業する浪江美容組合の四店舗のスタッフが「一生の思い出をつくる手助けをしたい」と総出で髪のセットやメーク、着付けに当たった。
 東京電力福島第一原発事故で全町民が避難生活を送る浪江町の成人式は二本松市安達文化ホールで行われた。仮設住宅は会場近くにあり、午前5時から予約を入れた女性たちが親と共に来店した。店内は10坪ほどの広さで、仕切りで着付け場所を確保するなど工夫しながら対応した。
 浪江美容組合長の大島信司さん(53)は「1年以上前から予約をしていた人もいる。十分な環境ではないが、本人はもちろん、晴れ姿を夢見ていた親御さんのためにも誠意を尽くす」と笑顔で迎えた。福島市や南相馬市、埼玉県などの避難先から13人が訪れた。その一方で予約しながら震災後に連絡が取れなくなった人もいたという。
 新成人の娘に同行した福島市南矢野目の仮設住宅に住む田中朋子さん(56)は「川俣町や磐梯町の避難先を転々とした頃は、どうなるかと思った。まだまだ落ち着かないが、久しぶりに友達と会えた娘のうれしそうな顔を見てホッとしている」と目を潤ませた。
 浪江美容組合は昨年11月から安達運動場と福島市北幹線第一の両仮設住宅に共同店舗を出した。ビューティーサロンちどり、美容室ローズ、ビューティーサロン中里、ふたば美容室の4店が手分けして営業している。大島さんは「以前に比べると客は少ない。それでも、いわきから来てくれる人もいて、少しでも皆さんの憩いの場になればと心掛けている」と語っていた。