東日本大震災

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今を生きる 感謝の心 詩吟に込め 一時避難の美里で披露

感謝の思いを込め詩吟を披露する渡辺さん

■楢葉町職員 渡辺明典さん

 お世話になった会津美里町の人たちに感謝の思いを込めて-。楢葉町職員の渡辺明典さん(54)は3日、会津美里町構造改善センターで開かれた地元の第19回芸能発表会に特別ゲストとして楢葉町からただ1人出演し、詩吟を披露した。かつて、避難所だったステージを舞台に、自慢ののどを震わせた。
 原発事故後、多くの楢葉町民が会津美里町の温泉施設や体育館などに避難。同センターも楢葉町の1次避難所として、最大約120人の町民を受け入れた。渡辺さんは同センターの責任者として泊まり込み、避難者支援に従事した。1次避難所の閉鎖後は、会津美里町の仮設住宅担当者として住民の支援を続けた。
 ある日、芸能発表会の開催を耳にした。一昨年から始めた詩吟を、会津美里町の人たちに披露することを決め、出演を依頼。震災で練習は途絶え、不安もあるが、それ以上に感謝を伝えたかった。
 当日、同センターを訪れた渡辺さんは「混乱していたあの当時を思い出すと懐かしさを感じる。ステージに立つとは夢にも思わなかった」と辺りを見回した。避難当時、ホールは住民であふれ、町職員はステージ上に机を並べ、その片隅で睡眠を取っていた。
 「感謝の気持ちを込め吟じます」。舞台に上がると力強く、詩吟「中庸」を披露した。会場からは大きな拍手が湧き起こった。それは、自分だけにではなく楢葉町民へのエールにも感じた。
 いわき市に災害対策本部を置く楢葉町は、除染やインフラ整備の準備を進めている。渡辺さんも今月1日から、下水道などの復旧準備のため、いわき市での勤務となった。
 ステージを終えた渡辺さんは「お世話になった会津美里町の人たちに、黙って帰るわけにはいかなかった。いい機会を与えてもらいました」と充実した表情を見せていた。

カテゴリー:連載・今を生きる

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