東日本大震災アーカイブ

【「仮の町」構想】どうなる課税、ごみ... 自治体の中に自治体 課題次々、募る不安

 自治体の中に自治体が誕生することはあり得るのか-。「仮の町」の受け入れ先として浮上しているいわき市だが、関係者は法律や制度上の問題をはじめ、課税、ごみ処理、インフラ整備予算などの課題を指摘する。双葉郡の関係自治体の構想が明確に見えない中、「受け入れ側」としてのいら立ちと不安が募る。

■白紙
 「仮の町」という日本で前例のない構想を突き付けられた、いわき市の担当職員。「そもそも人口や所在の確認に必要な住民登録は市と町のどちらになるのか。自治権はどちらにあるのかという地方自治制度の問題がある。課税、行政サービスの展開など考えれば考えるほど課題が出てくる」と嘆く。
 現在、同市が実施している仮設住宅のごみ収集はどうするのか。火災などの災害が起こった場合、どの消防署が対応するのか。行政サービスの細かなルール作りは全く白紙の状況だ。仮の町でも引き続き、市がサービスを提供し、税収が得られない状態になった場合、「納税者である市民の不満が高まる可能性もある」と市幹部は指摘する。
 生活保護制度にも課題はある。生活保護は居住実態がある自治体から支給されるが、「(仮の町が誕生した場合)どちらが支給するのか...」と市の担当者は頭を抱えた。

■先行き見えず
 上下水道や道路などの仮の町のインフラ整備を担う主体も不透明だ。いわき市は東日本大震災による家屋被害が仙台市に次いで2番目に多い。復旧・復興に向けて財政状況は逼迫(ひっぱく)している。市幹部は、仮の町に関する負担が生じた場合、「必要があれば費用を国に要求するしかない」と訴える。
 現在、約2万3000人の双葉郡住民が避難している同市は医療機関や福祉施設も既に飽和状態だ。仮の町に医療機関が設置されなければ、新たな施設を設ける必要が出てくる。
 住宅整備の方針も見えない。国が費用の8分の7を負担し、残りは地元が負担する災害公営住宅制度を活用する案が一部に浮上しているが、財政負担の行方も不透明だ。
 全く先行きが見えない中、受け入れ先に"指名"された渡辺敬夫市長は「うちだって末端自治体の1つだ」と悩める現状を強調した。

■廃虚の懸念
 仮の町構想を打ち出したのは、富岡、大熊、双葉、浪江の4町。いずれも、東京電力福島第一原発事故により長期の帰還困難が予想される自治体だが、実現には難航も予想される。
 4町の仮の町の検討状況は以下の通り。富岡町はいわき、郡山両市、大熊町はいわき市周辺、浪江町はいわき、南相馬両市周辺と中通りを想定し、双葉町は白紙の状態だ。
 避難区域見直しや中間貯蔵施設の設置、賠償などをめぐる国との調整は進んでおらず、各町とも仮の町の具体的なプランを策定できていない。ある町の職員は「町民は避難先で生活すべきか、仮の町に戻るべきか判断がつかないでいる」と話す。
 いわき市内郷の会社役員小野義秀さん(62)は「同じ県民として支援したい気持ちはみんなあると思うが、内容が漠然としたままでは不安を感じる市民もいるのでは。仮の町から人が出て行った跡に巨大な廃虚ができるようでは困る」と語った。

―双葉郡4町の「仮の町」の検討状況―
【富岡】
 今年1月に決定した復興ビジョンで、仮の町として、いわき、郡山両市を例示した。今秋までに作る予定の復興計画に具体的な設置場所を盛り込む考え。
【大熊】
 5年後を目標に役場機能などを会津若松市から、いわき市周辺に移す案を第1次復興計画素案に盛り込んだ。現在3000人以上の町民が生活する会津若松市内の住環境の充実にも取り組む。
【双葉】
 昨年12月に策定した復興ビジョン案に仮の町をつくる構想を盛り込んだ。設置場所は県内、県外も含めて白紙。
【浪江】
 19日の臨時町議会で決まる見通しの復興ビジョンで町外コミュニティーの実現を打ち出す。設置場所はいわき、南相馬両市周辺と中通りを想定している。

【背景】
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以後、いわき市は市内の借り上げ住宅や仮設住宅などに双葉郡の住民約2万3000人を受け入れているが、市民が借りる民間アパートが不足する一方、就業先の確保が困難になるなどさまざまな問題が生じていた。こうした中、同市は双葉郡内4町の「仮の町」設置先として名前が挙がった。国、県、4町から関連情報が入らず、渡辺敬夫市長は不快感を示していた。

カテゴリー:3.11大震災・断面