■東京芸大大学院修了、古里で創作 美術家・佐藤香さん
今春に東京芸大大学院を修了した田村市船引町春山の美術家佐藤香さん(24)は自宅周辺の土を使った壁画風の絵画の作品展を21日まで東京・銀座のペッパーズギャラリーで催している。東京電力福島第一原発事故の影響で都民らが本県の土に抱く「危険」「不安」というイメージを「美しいもの」「安心」に変えたいという願いを作品に託した。
大学院の修了記念制作で完成させた縦2.3メートル、横10メートルの絵画「すべては渦の中にある」をメーンに3点を展示した。田村市の田や畑、神社などで採取した色の異なる土を紙に張り付け、古里が震災から立ち上がる胎動の様子を抽象的に表現している。
土の放射線量は大学の試験機関で測定し、いずれも0.15マイクロシーベルト以下だった。測定値は表にまとめて会場で公表している。
佐藤さんは古里の自然の素晴らしさと安全性を広く発信しようと昨年11月から作品づくりに取り組んだ。「反原発などの意識はない。ただ、古里を自慢したいだけ。今も福島の土の美しさは不変であることを視覚的に表現した」という。
福島西高デザイン科学科、東北芸術工科大卒で、東京芸大大学院修了後に里帰りした。「これからも地元の土と歩んでいきたい」と展示作品には揺るぎない決意も刻まれている。
会場の電話は03(3544)3240。
(カテゴリー:連載・今を生きる)