東日本大震災アーカイブ

今を生きる 福島の元気 白球に 大山さん(川内)宣誓の大役

前列左から高沢さん、大山さん、三浦さんら福島アクロスのメンバー

■福島アクロス 19、20日全国身障者野球大会出場
 体に障害がある社会人でつくる県内唯一の軟式野球チーム「福島アクロス」が19、20の両日、神戸市で開催される選抜全国身体障害者野球大会に出場する。昨年は東日本大震災の影響で出場を辞退したが、第20回の節目の今年は東北の被災地を代表して臨む。開会式で郡山市に避難する川内村の会社員大山康弘さん(27)が選手宣誓の大役を務める。13日、田村市で最終調整に励んだ。大山さんらは「福島の元気をプレーで伝える」と誓っている。
 田村市の丘陵地にある「ホームグラウンド」の常葉運動場。晴れ渡った大会前の最後の練習日には福島や郡山、二本松、南相馬各市などに住む選手18人のうち、10人が集まった。「もう1本こい」。ノックやフリーバッティングで汗を流し、3時間が瞬く間に過ぎた。
 背番号「1」を付ける大山さんは、幼いころから左半身に障害があったが、富岡高川内分校時代は野球部で投手として活躍。就職後も野球を続けたいと5年前にアクロスに入った。
 昨年3月の東京電力福島第一原発事故に伴い家族4人で埼玉県の親類宅に身を寄せ、約3カ月後に郡山市の借り上げ住宅に移った。チームは生活や仕事の都合などで選手が集まれずに活動を中止した。当時双葉翔陽高3年生で野球部員だった弟和貴さん(18)=現・専門学校生=とキャッチボールは続けた。肩を動かしながら心の中で考えた。「野球はしばらくできないだろう」
 今年2月、主催者から全国大会に選抜したと通知が届いた。久しぶりに選手たちは連絡を取り合い「出場しよう」と沸き立った。大山さんは家族で避難していることもあり迷いがあった。主催者からは選手宣誓を務める選手の選出を要望された。「避難生活を送る大山君しかいない」。選手全員の意見だった。任された大山さんは「本当に驚いた。頑張ろうという気持ちが湧いてきた」と振り返る。
 大会出場が決まり、チームは4月から週2回、常葉運動場で練習を再開した。仕事で来られない選手も多いが、今は練習を続け、野球をできる喜びを味わっている。
 大山さんは「1つでも勝ち進んで地元に明るい話題を届けたい」と言葉に力を込める。選手宣誓では放射線や風評被害と闘う県民を代弁し「原発事故に負けない」と宣言するつもりだ。

■過去準優勝2回
 福島アクロスは平成7年に結成。交通事故などで手や足に障害がある10代~50代の選手が所属する。全国大会は昨年を除く全18回に出場し、東北勢で最高の準優勝に2回輝いている。
 主将の福島市、会社員三浦靖弘さん(40)は「被災地の代表として周囲から注目される」と意気込む。代表者の福島市、高沢政好さん(55)は「心配してくれた全国の関係者に元気な姿を見せたい」と選手の活躍に期待する。「ナイン」は18日、現地入りする。

■初日広島と対戦
 大会は日本身体障害者野球連盟の主催。阪神大震災の復興事業として神戸市で毎年開かれている。今回は全国各地の16チームがトーナメントで競う。福島アクロスは19日午後3時半から、ほっともっとフィールド神戸で行われる1回戦で広島アローズ(広島)と対戦する。

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