■いわきの「菓匠梅月」代表・片寄清次さん(81)
東日本大震災で被災し店舗を失ったいわき市久之浜町の「菓匠梅月」は、創業以来店を構えてきた久之浜で3月に営業を再開した。商品棚にはかしわ餅と焼き菓子が並ぶ。かしわ餅は午前中に売り切れることもある看板商品だ。「少しずつ生産が追い付いてきた」と代表の片寄清次さん(81)。表情に笑顔が戻り始めた。
昨年3月11日の津波と、その後に起きた火災で店は炎上し、地域から親しまれていた店を失う。1度は東京で暮らし始め、菓子職人の仕事を離れた。
避難先から地元久之浜に戻るたびに、知り合いから「店を再開してほしい」と頼まれた。片寄さんも祖父から受け継いだ明治24年創業の店をなくすのは惜しかった。しかし、当初は「(自分は)高齢で店舗も機材もない。店の再開はリスクが大きい」と諦めていたという。
そんな中、久之浜のコンビニ店主から土地を貸すことを持ち掛けられた。工事業者も店舗の再建に協力すると言ってくれた。「若い人が見て、街の再興の足掛かりになれれば」と再開を決断した。
何10種類もあった商品は現在、3種類だけ。「これから少しずつ種類を増やして、食べたいというお客さんのために作り続けたい」。やる気はますます高まっている。営業時間は午前7時半から午後2時まで。火曜日は定休。問い合わせは電話0246(82)2020へ。
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