平野達男復興相は7日、東京電力福島第一原発事故に伴う全町民の医療費無料化を求める浪江町の馬場有町長の要望に対し、前向きに検討する考えを示した。馬場町長によると、平野復興相は「公平性を失わないようにする必要がある」と述べた。今後、同町以外の原発事故被災地域も含めて議論されるとみられる。
■双葉郡外の対応課題
会談は非公開で行われた。馬場町長によると、「原発事故の被災者が検査や治療を受ける際には医療費を無料にしてほしい」と要望。被爆者援護法に基づいてほぼ全ての疾病の医療費が原則無料となる原爆の被爆者健康手帳と同様の法整備を求めた。
平野復興相は年代にかかわらず、全住民を対象にした医療費無料化について「公平性が問題となる」としながらも、「検討する」と明言したという。
会談後、馬場町長は無料化の対象範囲について「町だけでは不公平が生じる。双葉郡全体が想定されるのではないか」との見方を示した。
しかし、双葉郡内の町村関係者によると、住民帰還が始まっている広野、川内両町村などと、避難区域が再編されていない双葉、浪江両町などでは医療費無料化に対する考え方に温度差がある。さらに、計画的避難区域になっている飯舘村と川俣町山木屋など双葉郡以外の被災地域を対象にするかどうかなども課題となりそうだ。
浪江町は今月中にも全町民に放射線健康管理手帳を配布する方針。町民の長期的な健康管理に役立てる取り組みだが、町は「長期的、継続的な健康確保のために医療費無料化や各手当の交付などが不可欠」としている。
■原爆被爆者と同等に 浪江、双葉町長国に法整備要望
浪江町の馬場町長と双葉町の井戸川克隆町長は7日、厚生労働省で西村智奈美副大臣と面会し、全町民の医療費無料化など広島、長崎の原爆被爆者と同等の援護をするための法整備を要望した。
「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報が公開されず、その結果多くの町民が放射線被ばくという生涯にわたる健康不安を持った」と指摘。法律に基づいた「放射線健康管理手帳」を交付し、医療費の無料化や健康管理に関わる手当の支給などを求めた。
馬場町長は終了後の取材に「他の国民と公平感の問題があるかもしれないが、避難生活が長引く町民は放射線によるストレスもたまっている。8月末までに回答を頂きたい」と述べた。
被爆者援護法に基づく被爆者健康手帳制度では、年2回の定期健康診断が受けられ、医療費も原則無料。症状に応じさまざまな手当も支給される。
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