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避難先から海外へ 福島の技術発信

避難先で事業を再開し、年内にも海外で事業展開を目指す木藤さん

■双葉のシール印刷業 木藤喜幸さん
 東京電力福島第一原発事故で双葉町から郡山市に避難しているシール印刷業ネットアンドプリント社長の木藤喜幸さん(47)は年内にも海外で事業展開を目指す。ドラム缶用専用シールの国内シェアは8割を誇り、原発事故により一緒に避難した従業員と昨年7月に市内で事業を再開。東日本大震災の影響で売り上げは落ち込んだが「町民を後押しするためにも前を向いて進む」と決意した。福島生まれの技術を避難先から世界へ-。米国などを想定した新たなステージに一歩踏みだす。

■郡山で事業再開し1年
 木藤さんは平成12年に同社を双葉町に設立した。同社の前身の会社がドラム缶内の物質の情報が分かるように缶の外側にシールを貼ることをメーカーに提案したところ、各企業が応じ、シールの印刷システム構築も含めて任せられるようになった。地道にメーカーとの信頼関係を築き、ドラム缶に貼るシールの国内シェアが8割を誇るまで成長した。
 東日本大震災と原発事故は順調だった事業を一変させた。会社は双葉町内の福島第一原発から約2キロの場所にあり、十数人の従業員と避難を余儀なくされた。昨年4月から受注した商品を外注して生産し、取引先との関係を維持したが、4月だけで約1000万円の赤字が出た。
 事業再開の道のりは厳しかった。福島第一原発から3キロ圏内への立ち入りは許可されず、必要な機器を持ち出すことができない。新しく機材をそろえようにも費用は賠償されるのか不安だった。「従業員の仕事を失わせるわけにはいかない」と自分に言い聞かせた。必要最低限の機器を整え、昨年7月に郡山市の仮設工場で再出発した。
 海外での事業は震災前も考えたことはあった。費用対効果を考えるとリスクがあり決心がつかなかった。円高が進む中、「海外に市場を求めなければじり貧となる」と決断。シールの材料となる紙のメーカーなどと連携し、米国や英国、タイ、インドネシアなどで事業を検討している。場合によっては事業所を置くことも考えている。
 不安はある。海外では1つの事業所から注文があっても、到底採算は取れない。周辺の事業所などを営業して回り、経営が成り立つ生産量を確保しなければならない。
 それでも郡山を拠点とした海外への事業展開にこだわる。少しでも一緒についてきてくれた従業員ら町民の後押しをしたいという思いからだ。
 「まず事業を継続させる。そして仮設住宅などで生活する双葉町民に新たに仕事をお願いできるようにしたい。今の仕事を頑張ることが町の復興にもつながってくれるはず」と信じている。

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