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今を生きる 土に託す帰郷の望み 耕作放棄地で畑作

会津美里町の畑にキャベツの苗を植える高木さん夫妻

■楢葉から会津美里に避難 高木保之さん 66 キヨ子さん 68 夫妻
 炎天下、故郷を思いながらブロッコリーやキャベツの苗を畑に植える。「久しぶりだから、疲れるよ」。会津美里町の楢葉町仮設住宅で暮らす高木保之さん(66)、キヨ子さん(68)夫妻は笑顔で汗を拭った。仮設住宅近くの耕作放棄地で畑作を行う事業が29日から始まり、仲間と土の感触を楽しんだ。
 楢葉町上小塙で農業を営んでいた。水稲150アールと和牛の繁殖を手掛ける複合経営だった。昨年の東日本大震災と原発事故で避難を余儀なくされ、手塩にかけた牛たちは殺処分。「子牛もいたから、かわいそうで...」。キヨ子さんは思い出すと、今でも涙が出そうになる。
 昨年6月に母親と姉の4人で仮設住宅に移った。野菜など買ったことはなかったから、自分で作った作物を口にできないのが悔しかった。そんな時、耕作放棄地を活用して畑作をしてみないかと、会津美里町から仮設住宅に話があった。「リハビリになるか」と、2人で申し込んだ。
 会津美里町耕作放棄地対策協議会が、仮設住宅から約1キロ離れた遊休地26アールを耕起・整地。被災者を雇用し営農再開に備えてもらおうと取り組む事業だ。高木さん夫妻ら7人が参加し、秋野菜とソバを栽培する。
 保之さんは一時帰宅のたびに、自分の田んぼがどこかさえ分からないほど、雑草が生い茂った故郷を目の当たりにし、がくぜんとするという。それでも、帰還の望みは失っていない。「楢葉でまた農業をやるために、体を動かしていないと」。「自分で作ったおいしい野菜を食べて頑張りましょう」。傍らでキヨ子さんが言った。

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