東日本大震災

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厳しさ肌で感じて Jヴィレッジに復興本社 避難者、東電に注文

福島復興本社が入るJヴィレッジの本棟

 東京電力が「福島復興本社」をJヴィレッジ(楢葉・広野町)に設置すると決めた29日、避難住民は、避難区域の厳しい状況を幹部ら社員が直接肌で感じて対応するよう求めた。除染、賠償の進まない現状に不満を抱えており、双葉郡に寄り添う姿勢を打ち出したことは評価しつつも、「ポーズだけでは意味がない」と実行力の発揮や対応の迅速化に期待している。
 「東電は被災地の現状を理解していない」。会津若松市の仮設住宅で暮らす大熊町の無職高瀬重子さん(64)は、社員は県内に住み、地域の厳しさ、苦しみを身を持って知る機会にするべきだと考える。
 新聞に掲載される環境放射線量の測定値を見るたびに深いため息が出る。毎時24.87マイクロシーベルト-。自宅近くの放射線量は高い数値を示し続ける。27日に一時帰宅で自宅に足を踏み入れると、建物は東日本大震災の揺れにも耐えていた。戻る家はあるのに戻れない悔しさが込み上げる。
 復興本社には福島本部を構成する5つの組織のうち主要部門の企画総務部が置かれ、社員30人程度が勤務する。楢葉町商工会長の渡辺清さん(63)は「期待より人数は少ないが、復興本社があれば人の出入りは増える」とみる。
 8月の避難区域再編で町の大部分は避難指示解除準備区域となり、すぐに寝具クリーニング業の工場を再稼働させたが、ほかの事業者の再開はなかなか進まない。避難指示解除後の住民帰還に向けた下地づくりにつながることを望む。
 Jヴィレッジに近い広野町の6号国道沿いで飲食店を経営する白土喜久男さん(55)も「Jヴィレッジに東電社員が通勤することが町民の不安解消につながり、住民帰還が進むかもしれない」と期待する。
 東電は復興本社で地域のニーズをきめ細かくすくい上げ、除染や復興支援を強化する考えだ。会津美里町の仮設住宅で暮らす楢葉町の小山咲子さん(58)はJヴィレッジ近くで営んでいた民宿の再開を待ち望んでおり、「普段通りの町に早く戻すため効果を発揮してほしい」と願った。
 復興本社には賠償手続きの権限も一定程度移譲される。福島市の借り上げ住宅に避難する富岡町の三瓶一義さん(67)は、賠償交渉で東電側の受け答えに誠意が感じられず気分を害したという避難者の声を周囲でよく聞く。「県内に住む社員なら、もっと避難者の気持ちに寄り添う対応ができ、賠償のスピードも上がるのでは」と指摘した。

■寄り添う姿勢評価 楢葉、広野町
 Jヴィレッジがある楢葉、広野両町は、原発事故で大きな被害を受けた双葉郡内に設置するという決定を歓迎した。楢葉町の松本幸英町長は「被災者に寄り添い、難局を少しでも良い方向に進めたいという意気込みと理解した」と話し、「除染や賠償などの問題に迅速に対応できる」と期待感を示す。
 東電に町内設置の要望書を出していた広野町の山田基星町長は既存施設を活用することについて「コスト面だけでなく、すぐ復興に取り掛かれる」とメリットを挙げ、「多くの課題が残っているが、解決に向けて一歩前進した」と受け止めた。
 復興本社をめぐっては県内で誘致合戦が繰り広げられ、広野の他、福島、郡山、いわき、南相馬の4市が手を挙げていた。南相馬市の桜井勝延市長は「原子力災害からの克服に最前線で取り組んできた本市に設置されなかったのは残念」とコメントした。
 郡山市の原正夫市長は「双葉郡は原発事故で最も被害を受けている地域で妥当」と理解を示した。いわき市の渡辺敬夫市長は「廃炉に向けた取り組みや安全対策で十分な機能を発揮してもらいたい」と望む。福島市の幹部は「迅速な意思決定ができる体制を早急に構築してほしい」と求めている。

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