東日本大震災アーカイブ

県水産種苗研究所再整備へ 相馬共同火力新地付近に 知事年頭会見

年頭会見する佐藤知事

 県は東日本大震災の津波で全壊した県水産種苗研究所(大熊町)を相馬共同火力発電新地発電所(新地町)付近に再整備する。火発の温排水を利用し、ヒラメとアワビの種苗を育成。本県沖に放流し、県産ブランド再生の足掛かりにする考えだ。平成25年度から施設設計に入り、28年度の運用開始を目指す。佐藤雄平知事が4日の年頭記者会見で明らかにした。
 火発の冷却に使われた温排水を育苗施設に引き込む。温排水は通常の海水温度よりも7度程度高いため、年間を通じて稚魚や稚貝の生育を早めることができる。温排水の利用で生産コストを大幅に圧縮することも可能で、これまでは東京電力福島第一原発の温排水を利用してきた。現在の施設は帰還困難区域内で自由に立ち入りできないため、県は国の復興交付金を活用して再整備することを決めた。
 28年12月ごろ放流を開始し、29年夏ごろから漁獲する予定。ただ、ヒラメは食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出され、現在も出荷制限となっている。本県沖は操業自粛が続いており、漁の早期再開が大きな課題となっている。
 県は昭和58年から大熊町で種苗生産を進め、ヒラメは年間約100万匹、アワビは約50万個を放流してきた。津波で施設が全壊したため、24年からはヒラメを新潟県、アワビは静岡県の水産関係施設で生産している。昨年は新潟県で育てたヒラメ10万匹を放流した。