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【住宅除染の基準設定】 安心に結び付くのか 住民 効果に疑問 「数値で確認」評価の声も

福島市では平成25年度に入り中央地区の住宅除染が本格化している=24日午後

 東京電力福島第一原発事故に伴う住宅除染で、県が新たに基準を設けることに「本当にこの基準で大丈夫なのか」と疑問視する声が上がった。基準は屋根などにおける放射線量の減少率で適切な作業が実施されたかを判断するが、実際に人体に影響する放射線量とは異なる。「影響が分かりにくい」との意見があり、基準の設定が県民の不安解消につながるかは不透明だ。今後除染が始まる地域では作業の適正化につながると評価する住民がいる一方、既に自宅の除染を終えた地域の住民には困惑が広がった。

■異なるものさし 
 「いきなりcpm(カウント・パー・ミニッツ)といわれても分からない。今まで使ってきたものさしを変えられては判断しようがない」。特定避難勧奨地点が点在し南相馬市が2月から除染を進めている同市原町区大原の行政区長深野良興さん(74)は除染の新基準に戸惑いを示す。
 市内は国直轄の除染地域と市が実施する除染地域が混在する。国は年間の積算線量が20ミリシーベルトを超える宅地などは20ミリシーベルト以下、20ミリシーベルト以下は半分以下に低減させる方針。市は空間放射線量の60%低減を目指している。
 しかし、今回示された新基準は住宅などの表面の放射線量を示すcpmが使われ、人体への影響を表す単位の「シーベルト」と比較することができない。深野さんは「基準に関係なく、住民が安心できるまで徹底した除染を繰り返すべきではないか」と訴える。

■不安と期待 
 福島市蓬莱町の主婦(37)は住宅除染の同意書を市に返信したが、作業はまだ始まっていない。7歳の長男、3歳の長女と安心して生活するためにも、除染で確実に放射線量が下がることを望んでいる。ただ、県の新基準は、屋根の場合は放射線量が34%低減されれば達成される内容だ。
 「除染で全ての放射性物質が取り除けるとは思わない。でも、7割近くも汚染が残る状態で『合格』と判断して、本当に大丈夫なのだろうか」。母親として不安を募らせる。
 さらに、多くの市町村で線量の高い地域から順に除染を進めているが、新基準が「足かせ」になって作業の進捗(しんちょく)に影響が出ないか懸念もある。
 ただ、郡山市水門町の会社員降矢正さん(67)は「放射線は見ることができないが、低減の度合いが数値で確認されることになる。安心して作業を任せられる」と効果の判断が不透明だった除染作業に、基準が示されたことを評価している。

■なぜ今ごろ 
 福島市で比較的空間放射線量が高い渡利地区は4月1日現在、発注した約6000戸のうち6割の除染が終了している。市内では先行的に除染が進んでいた。このタイミングでの基準設定に、除染が完了した住民らは困惑している。
 「今ごろ基準を決められても...」。約1週間前に自宅の除染作業を終えたばかりの渡利の会社員男性(54)はため息をつく。作業前に基準が出ていれば業者の取り組み方も違っていたのではないかと考えている。
 平成18年に新築し、妻と長男との3人暮らし。これから安心して暮らし続けるためにも徹底した除染の必要性を感じている。市の担当者らによる事前の説明で再度除染することもあると聞いているが、今は結果を待っている。「基準に満たない場所があれば、何度でも除染してほしい」と求めた。
 自宅の除染を終えたばかりの伊達市霊山町の農業男性(82)は「終わってから定められても遅い。基準に達していなければまた再除染すべきだ」と不満を口にした。広野町の無職男性(59)の自宅は除染作業で空間放射線量が低減したが「その基準にどのような意味があるのかも知らない」と顔をしかめた。

【背景】 
 環境省は平成23年12月、放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト(年間追加被ばく線量1ミリシーベルト)以上の地域を含む市町村を国の財政負担で除染する「汚染状況重点調査地域」に指定した。県内では現在、40市町村が指定されており、このうち除染実施計画を策定したのは36市町村。市町村は計画に基づき住宅などの除染を進め、長期的に線量が年間1ミリシーベルト以下となることを目指す。湯川村は昨年11月、県内市町村で初めて計画に基づく除染を全て終えたが、他の市町村では仮置き場確保などの問題で住宅除染が全体的に遅れている。これまで除染効果に対する明確な基準がなかったために、住民が不安を感じていた他、一部で「手抜き」作業が問題になっていた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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