福島市発注の松川町の手抜き住宅除染問題で、雇用主から不当解雇された男性作業員の「除染等業務の特別教育」の受講時間が、国の規則の10分の1ほどだったことが分かった。証明書類には虚偽の「8時間受講」と記載されていた。福島労基署は5日までに事実関係を確認、労働安全衛生法違反の疑いで、1次下請け(三春町)、雇用主の2次下請け(札幌市)を行政指導した。作業員の健康管理と適正な除染作業を確保するために必要な特別教育でも「手抜き」が行われていたことが判明した。
特別教育は、作業員が除染業務に就く前、最低でも5時間半(学科4時間、実技1時間半)の講習を実施しなければならない-と国の除染に特化した規則「除染電離則」で規定している。特別教育は雇用主に実施義務があるが、元請けや下請けなど他の事業主が担うこともできる。
男性作業員らによると、5月18日に三春町の1次下請け業者の事務所で特別教育を受けた。その際、特別教育のテキストと、福島市の除染マニュアルに記された放射線量の数値目標が示された。担当者は「数字だけ頭に入れておいて」と指示したのみだったという。受講時間は30分程度だった。さらに、放射線測定器の取り扱いや、放射性物質の除去方法などの実技講習は一切なかったという。
作業員の安全衛生教育手帳には、除染の特別教育時間の欄に「8・0H」と記載され、8時間受講したことになっていた。さらに、「刈払機取扱講習」を19日に学科5時間、実技1時間の計6時間受けたと記入されているが、受講していないという。
同署は特別教育が不十分なケースでは、作業員の安全管理を適正に実施できないと判断し、行政指導したとみられる。
教育手帳には、除染と刈り払い機の両教育とも1次下請けの社長と同姓の押印があった。1次下請けの社長は「特別教育は部下の担当で、はんこを押していない」と否定した。同社は福島労基署の行政指導に対して、14日までに報告書を提出するという。
一方、2次下請けの幹部は「特別教育は(1次下請けに)任せていたので、よく分からない。(男性作業員は)松川地区以外の除染現場でも作業をしていた。既に特別教育を受けたと思っていた」としている。
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