東日本大震災アーカイブ

今を生きる 母校に希望の音色 「夢に向かい進んで」 錦中で復興願う自作曲披露

本県と岩手県で演奏会を開いた赤津さん(中央)と伊禮さん(右)、浦田さん(左)

■いわき市出身のピアニスト 赤津ストヤーノフ樹里亜さん

 いわき市錦町出身のピアニスト赤津ストヤーノフ樹里亜さん(32)は8日、音楽仲間と母校の錦中で演奏会を開いた。卒業後、母校で演奏するのは初めて。東日本大震災直後に復興を祈り作曲した「青い鳥」などを披露した。「生徒は真剣に聞いてくれていた。音楽で心を癒やしてもらえたと思う」と笑顔で話した。
 ブルガリア人指揮者の父とピアニストの母の長女として生まれ、3歳からピアノを始めた。母の実家があるいわき市で生活し、9歳の時に母を亡くした後も父や家族と市内などで暮らした。勿来高を卒業後、ブラジルに留学。ピアニストになる夢を追い続け、現地の音楽大学を主席で卒業する。スイス放送管弦楽団などでソリストを務めたほか、平成22年には国内でオリジナルアルバムを発売した。
 震災発生時は大阪の妹の家にいた。いわき市の家は被害を免れたが、父は東京電力福島第一原発事故の影響を考え、ブルガリアに帰国した。赤津さんはしばらく大阪府の妹の家に身を寄せた後、京都市内で生活を始めた。京都市に避難している県民ら対象のコンサートも昨年末に開いた。
 今回の演奏会は、知人のバイオリニストの伊禮しおりさん(39)=岩手県在住=、声楽家の浦田典子さん(41)=パリ在住=と東北被災地復興支援として企画した。4日から8日までいわき市の錦、湯本二の両中学校と岩手県の小、中学校の合わせて6校を訪問した。
 3人は錦中で約1時間に6曲を披露した。赤津さんは演奏の合間に中学時代の思い出などを語り、「錦中に誇りを持って学んでほしい」と呼び掛けた。最後に校歌を演奏した。母校での演奏を終えた赤津さんは「困難なことはあると思うが、夢に向かって前に進んでほしい」と後輩に期待を込めた。赤津さんは今後も全国で演奏会やコンサートを予定している。

カテゴリー:連載・今を生きる

後輩の前でピアノを演奏する赤津さん