東京電力福島第一原発では汚染水流出が止まらず、対策が喫緊の課題となっている。構内の地上タンクから高濃度汚染水が大量に漏れ出たことも確認され、県民の不安をあおる。政府は汚染水の発生を抑える「凍土遮水壁」設置などに、国費470億円を投入する方針を決めた。しかし、関係者から「即効性のある解決策は打ち出せていない」とする指摘が上がる。
地下水流入を防ぐため原子炉建屋を囲う凍土遮水壁は大規模な実用例がない。このため、技術的な課題を克服しながら整備する。470億円のうち320億円を充て、運用開始の目標を平成27年度前半から26年度内に前倒しする。
約150億円を投じて汚染水浄化設備の高性能化を目指す。約60種の放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS)より処理能力の高い設備を設ける。26年中の稼働を後押しする。
体制面では、首相が本部長を務める原子力災害対策本部の下に官房長官を議長とする関係閣僚会議を設置。福島第一原発近くに関係省庁の職員が常駐する現地事務所を設け、政府主導で取り組む。
政府・東電は汚染水への緊急対策として、汚染される前の地下水を海に流す「地下水バイパス」などを挙げているが、漁業関係者らの理解を得られていない。県内部からは「汚染水問題の抜本的な解決には長時間を要するだろう」といった声も漏れる。
一方、構内の地上タンクから約300トンの高濃度汚染水が漏れ出したことが確認された。原子力規制委員会はこの問題について、国際的な事故評価尺度(INES)で、8段階の下から4番目のレベル3(重大な異常事象)と評価している。
同原発の地上タンクには、部材を溶接で接合している「溶接型」と、ボルトで部材をつないで組み立てる「フランジ型」がある。水漏れはいずれもフランジ型で確認されている。東電は約300基あるフランジ型を、溶接型に交換する方針。
ただ、地上タンク周辺では、高い場所で毎時2000ミリシーベルトを超える放射線量が検出されている。地上タンク交換作業の難航が予想される。
政府の試算によると、福島第一原発1〜4号機周辺では1日約1000トンの地下水が流れ、このうち約400トンが原子炉建屋地下などに入り込んでいる。残り約600トンのうち約300トンは、トレンチ(地下道)にたまっている高濃度の汚染水などと混ざって海に流出している。
(カテゴリー:震災から2年6カ月)