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新天地で"夢"開発 原発事故...川俣から白河に工場移転 「医療機器」に参入、製品化 11月、独の国際展で技術発信

新製品について社員と意見を交わす宮坂さん(左)

■エコー電気 宮坂静子社長(67)
 白河市の工場でテープ製品の加工製造を手掛けるエコー電気(本社・川俣町)は、東京電力福島第一原発事故で製造拠点の移転を余儀なくされた。困難に負けず、社員一丸で医療機器分野に新規参入した。一時は途絶えた新製品開発の夢を実現し、11月にドイツで開かれる世界最大の国際医療機器展(メディカ)への出展にこぎ着けた。「前進する意志を貫いてきた。福島の技術を世界に発信する」。社長の宮坂静子さん(67)は新分野で飛躍を誓う。
 宮坂さんは平成7年、49歳で他界した夫昌幸さんの後を継ぎ、エコー電気社長に就いた。川俣町と広野町に工場を持ち、着実に業績を上げた。躍進を目指し、県が新規参入を促している医療機器分野に着目した。「持ち前の技術で挑みたい」。県が組織した研究会で法律や制度を学び、知識を蓄えた。
 新製品のアイデアを練っていたさなか、原発事故が起きた。会社の状況は激変した。主力工場があった川俣町は一部で放射線量が上昇するなど騒然とした状況となった。「製品の安全を確保し、取引先に供給を続けなければならない」。政府の避難指示はなかったが、工場移転を決意した。広野町の拠点は旧緊急時避難準備区域となり、閉鎖に追い込まれた。
 医療機器開発の夢は途絶えた。「会社の継続が第一だ」。町や県、地域の人々に支えられ、業務を続けてこれた。県内にとどまる覚悟を決め、白河市に空き工場を確保。23年6月に製造拠点を移した。
 業務が落ち着き始めると、宮坂さんの開発意欲が再燃した。テープ製品の製造で培ったパルプやポリウレタンの加工技術を応用し、ドライアイを診断する医療機器の製品化に取り組んだ。社員と意見をぶつけ合い、試作を繰り返して素材や構造の微調整を重ねた。今年7月、ようやく販売の態勢が整った。
 新製品は、本体のチューブに内蔵したパルプで急速に涙を吸収する仕組み。通常は5分ほどかかるドライアイの診断を5秒程度に短縮できる。現在、大学や医療機関で評価を受けている。

■本県8社出展 国際医療機器展
メディカは世界各国の関係者に製品をアピールする好機となる。「小さな会社だが、目標は世界のオンリーワン。被災地の福島から技術を発信する」。宮坂さんは新製品を手に世界を見据えた。
 メディカは40年以上の歴史を持つ世界最大規模の国際医療機器展。世界各国のメーカーなどが出展し、製品や技術力をアピールしている。今年は11月20日から23日までドイツ・デュッセルドルフ市で催される。
 本県からは、エコー電気を含む8社が出展を予定している。

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