東京電力は、福島第一原発事故に伴い発生した県と市町村の税収減少分を賠償する。文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が賠償の対象と認めた産業廃棄物税などの「目的税」に加え、個人県民税などの「普通税」も対象とする。東電の広瀬直己社長が6日、県原子力損害対策協議会の要望活動に対し明らかにした。県内では県と22市町村が総額92億円を請求しており、東電は今後、支払い対象とする具体的な税目を検討する。原発事故に伴う自治体の人件費の増加分も賠償する。
東電が示した主な賠償方針は【表】の通り。賠償の対象として、目的税では産業廃棄物税、県税のゴルフ場利用税や狩猟税、産業廃棄物税、市町村税の入湯税、国民健康保険税などが想定される。普通税は県税の個人県民税、法人県民税、法人事業税などが該当するとみられる。
県によると、昨年12月までに県が16億1千万円、県内22市町村が計76億1400万円を税収減少分として請求している。しかし、これまで東電は支払いに応じておらず、福島市と桑折町は原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てていた。
原発事故を受け、個人県民税などの普通税は被災者の生活支援のため減免した分について交付税措置されている。しかし、ゴルフ場利用税などの目的税については対象外となっている。このため、原賠審は昨年10月、「賠償すべき損害として認めることができる」との意見をまとめた。これを受け、東電は対応を検討していた。
一方、原発事故に伴う風評被害対策などで増加した県や市町村の人件費について、東電は事故との因果関係が明らかであれば支払う方針だ。
要望活動は東京都の東電本店で行われ、協議会長代理の村田文雄副知事と、轡田倉治県商工会連合会長、双葉郡の首長らが要求書を広瀬社長に手渡した。要望活動終了後、広瀬社長は記者団に、税収減少分の具体的な支払時期について「あまり時間はかけられない。スピードアップしてやらないといけない」と述べた。
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