東京電力福島第一原発事故で拡散した放射性物質は県土の7割を占める森林にも降り注いだ。森林全体の除染計画はなく、手法は確立されていない。賠償も不透明で、手入れが進まない要因だ。風評被害を受ける中、林業関係者は県産材の有効利用に向けて動きだした。再生可能エネルギーや、温室効果ガス排出を抑える資源として期待されている。
■再生エネの燃料に 河東 バイオマス発電施設稼働
再生可能エネルギーとして注目されるのが木質バイオマス燃料だ。会津地方では会津若松市河東町工業団地にあるグリーン発電会津のバイオマス発電施設を中心に、森林資源をエネルギーとして活用する循環システムが稼働している。
グリーン発電会津のバイオマス発電施設は平成24年に運転を開始した。木質チップをボイラーで燃やし、蒸気の力で発電機を動かす。出力5千キロワット級で約1万世帯分の電力を、電力会社の送電網を通して供給。市の庁舎や小学校など5施設で1日から同発電施設の電力を利用している。
木質チップは、間伐などの際に会津地方の山林に残された未利用材から作る。林業関連事業を総合的に手掛ける喜多方市のノーリンが毎月、発電施設に5千トン程度を搬入。年間6万トン程度の森林資源活用となる。
発電所を稼働させるには燃料の安定調達が条件。地域の事情を熟知した地元の事業者が地元の山林から集めるため効率的で、輸送距離も短くて済む。
斎藤大輔専務(36)は「会津の林業を活性化させるため、発電への利用を考えた。会津若松市は環境に配慮したスマートシティを目指している。会津の山林にとって最適な事業規模を守りながら、エネルギーの地産地消に貢献したい」と語る。
会津地方ではこのほか、会津坂下町の温泉施設糸桜里の湯ばんげで木質ペレットボイラーを導入している。
■新地発電所も導入へ 相馬共同火発 石炭と混ぜ燃焼 木質バイオマス
相馬共同火力発電(本店・相馬市)は新地町の新地発電所1号機、2号機(各出力・100万キロワット)の発電に木質バイオマス燃料を導入する。石炭と混合して燃焼させ、二酸化炭素の削減を図る。設備工事を進めており、平成26年度内の運用開始を目指している。
再生可能エネルギーの利用促進や地球温暖化対策などを目指した取り組み。木材を伐採した後の残材を粒状に加工。年間約14万トンを石炭と一緒に約3%の混焼率で燃やす。二酸化炭素削減量は年間23万トン程度を見込んでいる。
23年1月に着工したが、同年3月の震災の津波で被災し、バイオマス設備設置工事現場も被害を受けた。新地発電所の復旧が完了したのを受け25年3月から工事を再開した。
(カテゴリー:震災から3年)