原発事故に伴う県の災害公営住宅の入居が今秋にも始まる。震災と原発事故から3年3カ月が過ぎ、避難者の心労は増し、抱える問題は多様化している。福島大が4月に開所した災害心理研究所の所員を務め、うつくしまふくしま未来支援センター特任教授の本多環さんに、避難者の抱える課題解決に向けた支援プログラムなどについて聞いた。
−震災と原発事故で避難者にどのような環境変化が起きたか。
「学校教育環境、住環境、家庭環境が激変した。住環境では、避難前まで多世代で大きな家に住んでいた人が、狭い仮設住宅での生活を余儀なくされ、家族が分散したり家庭の中での居場所を失ったりという事例が多くある。避難前までのコミュニティーが崩れ、人と人とのつながりが消失してしまった。その結果、孤独感を感じている人も多い。避難生活によるストレスは増大している」
−県の災害公営住宅の建設が進み、秋には入居が始まる。
「避難者は避難所を何カ所も移り、自分の衣食住を心配しなければならない状況の中、現在の仮設住宅の生活を始めた。県が災害公営住宅の入居受け付けを始めるに当たり、避難者一人一人にきめ細かに対応した仕組みと仕掛けが必要になる」
−仕組みと仕掛けとは具体的にどのようなことか。
「仮設住宅入居時は、避難前の居住地ごとに仮設住宅が割り当てられた。しかし、震災から3年3カ月過ぎた今は、避難者の生活が多様化してきている。避難生活による新たな絆や信頼関係も生まれており、避難者の状況に応じた選択ができるよう、入居条件を細分化していくことが重要となる。入居者が新たなコミュニティーを形成することができるように入居者主体の仕組みづくりが必要だと考える」
−仮設住宅の孤独死が問題になっている。
「震災と原発事故によって家族や地域とのつながりが分断され、一人で生活する高齢者が生まれてしまった。行政、民間、専門機関など、さまざまな団体が連携し、仮設住宅で生活する人たちに寄り添っていく仕組みをつくっていかなければならない」
−福島大災害心理研究所はどのような研究をしているのか。
「研究所では、震災や原発事故によって県民がどのような心理的被害を受けたのか、その実態を解明し、そのメカニズムを研究している。研究結果を生かしながら科学的根拠に基づいた支援プログラムの実践を目指している。心のケアとひとくくりにして心理の専門家が対応するのではなく、それぞれが抱える不安や悩みに寄り添うことができるような専門家の育成が重要と考える」
■略歴
ほんだ・たまき 大阪市出身。宮城教育大教育学部卒。福島大大学院修了。昭和61年、本県の公立小学校教諭になり、相馬市や川俣町の小学校に計17年間勤務した。福島大付属小に不安や悩みを抱える児童を支援する「ほっとルーム」を開設した。平成24年に福島大うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授、26年4月から特任教授。51歳。
(カテゴリー:震災から3年3カ月)