東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生後、富岡町で初めてとなるコメの出荷に向けた稲刈りは2日、町南部の下郡山地区の水田で行われた。全袋検査で安全を確認した後、JAふたばと契約して出荷する。仮設住宅での餅つき大会や関係者向けの試食会も開き、町民らと収穫の喜びを分かち合う。
水田は避難指示解除準備区域に指定されている。地元の農家でつくる「ふるさと生産組合」の組合員が所有する120アールの水田に、「コシヒカリ」「天のつぶ」「こがねもち」の3種類を植えた。
組合員が避難先のいわき市や郡山市から毎週1日ほど通い、水稲の栽培を進めてきた。渡辺康男組合長によると、イノシシやカモの被害は出たが、夏場の好天により例年並みの収穫が見込まれるという。大型コンバインを使い、黄金色の稲穂を次々と刈り取った。
昨年の試験栽培では放射性物質に関するデータ収集や農地保全などが目的のため、収穫したコメは全て廃棄処分となった。それだけに渡辺組合長は「農業は町の基幹産業の一つ。営農再開に向けて、一歩前進した」と喜ぶ。コメの価格が下落する傾向にあることから、低コストで良質なコメを目指して来年以降の品種や作付面積などを再検討する。
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