東日本大震災アーカイブ

震災乗り越え躍動 県高校サッカー優勝の尚志

震災と原発事故を乗り越え、全国大会の切符を勝ち取った尚志の稲村(左)、鈴木の両選手

 郡山市西部サッカー場で1日に行われた第93回全国高校サッカー選手権県大会で優勝した尚志は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を乗り越えた浜通り出身の選手がチームの勝利を支えた。震災でいわき市の実家が全壊したMF稲村知大(ちひろ)選手(17)=3年=は中盤の守備の要としてフル出場し、楢葉町出身のMF鈴木大(だい)選手(18)=3年=も得点機を演出。「全国大会で活躍することが支えてくれた人への恩返し」。感謝の思いを胸に全国に挑む。
 稲村選手は中学生だった平成23年3月の震災でいわき市平の実家が全壊し、家族は市内のマンションで避難生活を送っている。どこの高校でサッカーを続けるか悩んだが、「やりたいことを思い切りやりなさい」という両親の言葉に後押しされ、親元を離れて強豪の尚志に進んだ。
 尚志は昨年まで2年連続で選手権県大会で敗退。昨年の富岡との決勝では、稲村選手のファウルで与えたフリーキックが富岡の先取点につながった。「もう県内では絶対負けたくない」。この一年間、昨年の決勝の悔しさを忘れたことはなく、厳しい練習に取り組んだ。決勝では中盤の守備で活躍し、チームの勝利を支えた。
 会場には、いわき市から母雅子さんが応援に駆け付けた。雅子さんは10月13日が誕生日。「この勝利を母に贈りたい。全国制覇を果たすことが最大の親孝行」と大舞台に向けて意気込んだ。
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 鈴木選手は楢葉町出身で、原発事故後に家族でいわき市に避難した。当時、町内のサッカー仲間は散り散りになり、一時は落ち込んだというが、避難先でサッカーを続けることで元気を取り戻した。「震災を経験し、いろいろな人に支えられていることが分かった」という。
 ドリブルが持ち味で、MFで先発出場した決勝ではサイドから好機をつくった。「全国大会で得点を決めたい。試合で活躍することが、家族をはじめ支えてくれた人への感謝につながる」と誓った。