―本県の農林水産物に対する消費者動向をどう見るか。
「県内の消費者は本県農産物への原発事故の影響を『気にしない人』『気にし続けている人』に大別される。気にしない人は自分なりの基準や各種の情報を精査した上で、『安心だ』という確証を持って購入、消費している。一方、気にし続けている人は震災直後に混乱した情報発信の在り方などを背景に、国や県の姿勢に疑問を投げ掛けている人が多いようだ」
―県外では放射能の影響を懸念した買い控えも続く。
「そうした人も中にはいるだろうが、原発事故から4年が経過しようとしている現在は放射能を心配して本県産品を購入しない人は少なくなっているのではないか。私は流通過程に問題があると感じている」
―問題とは。
「原発事故発生後、本県の多くの農産物は出荷できなくなった上、生産の継続も困難となった。避難区域の生産者は生産基盤を失った。この間に仕入れ先は本県から他産地に変わってしまった。現在、ほとんどの本県産品から放射性物質は検出されていないが、一度、変更した仕入れ先を再び本県に戻すことは、コストや効率の面から敬遠されているのではないか。放射性物質とは別の要因が県外での本県産品の流通量減につながっていると考える。生産基盤の消失で定量を確保できない産品もあり、本県産から流通業者を遠ざける一因ともなっている」
―対策は。
「まずは『地産地消』をより広めることが肝要。県外にいくら本県産品の魅力を訴え掛けても、県内で消費が拡大しなければ不信感を抱かれてしまう。行政や生産者団体は、県内の消費者の理解を一層、得られるような取り組みが必要だ」
―具体的にどのような対応をすべきか。
「元来、本県産品は高品質で知られていた。それは今も変わらない。原発事故で一時、出荷停止措置となったが、優れた技術を持った生産者は大勢いる。高い技術力を持った生産者への支援をより強力に打ち出し、再び生産者が輝けるように行政、生産者団体が一丸となってバックアップすべきだ。既に持っている魅力や技術力を、さらに磨き上げることが風評を打ち消すことにつながる」
■略歴
こやま りょうた 東京都出身。北海道大大学院農学研究科博士課程修了。平成17年に福島大経済経営学類准教授。うつくしまふくしま未来支援センター副センター長も務めている。専門は農業経済学、地域政策論。農学博士。40歳。
(カテゴリー:震災から3年9カ月)