南相馬市原町区の詩人宝玉義彦さん(39)は初の詩集「Picnic」を思潮社から刊行した。東日本大震災後の避難体験や日常の思いをつづり、多くの人の心に届く普遍性のある作品群とした。
29歳から38歳までに書いた23編を収録した。亡き祖父について記した「マイグランドファーザー・ユアグランドファーザー」など、14編が日常生活に基づく詩となっている。「個人の声に立ち返れば、どこにでも通用する詩になると思った」という。
厳しい体験が突然脳裏に浮かぶように、平穏な日常を詠んだ詩群の中に、震災を切り出した詩を挟み込んだ。「水田地帯の皮膚を剥いでいった」から始まる「阿武隈を振り返らず」など、被災体験から生まれた詩は迫力に満ちている。
宝玉さんは相馬農高在学中に詩を書き始めた。詩人の故田村隆一さんに私淑し、農業を営みながら言葉と格闘し続けた。平成19年に県文学賞詩部門正賞に輝いた。震災後は東京へ避難し、今は東京と原町を行き来して生活している。
詩集はA5判、108ページ。2700円。
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