東日本大震災

「復興を問う-震災6年の現実」アーカイブ

  • Check

足りぬ国のてこ入れ 社内努力も「限界」 人手不足(上)

人手が足りない中、業績を上げようと作業するアリーナの社員。自助努力が続く

 相馬市の電子機器設計・製造業「アリーナ」は携帯電話部品や車載用の音声信号処理部品などでものづくりの先端を走る。昭和45年に創業し従業員約150人の企業に成長したが、東日本大震災、東京電力福島第一原発事故以降、新入社員確保に苦慮している。 例年、地元の相馬東、新地、相馬農など各高校の生徒を中心に新卒者を2、3人採用してきた。震災前は10人程度の応募があり、筆記試験などで選抜していた。震災と原発事故後に状況は一変。応募自体が2、3人に減った。
 地元からの採用希望者が減り、社長の高山慎也(51)は隣接する宮城県丸森町など同県南部の高校に求人案内を送り、社員を募った。

 ギリギリの企業努力を続けている。社業は人が集まらない状況を前提とした。
 工業高などで専門知識を学んだ生徒に絞って応募を待つよりは、知識はなくとも入社後に技術を身に付けてもらう方が人が集まりやすい。このため、社内で独自の教育制度を設けた。高校の普通科出身者でも簡単な作業から学べるようカリキュラムを作り、学ぶ時間を確保した。少しずつ技術を覚えた後にエンジニアや製造ラインの責任者に充てる計画を進めている。
 製造ラインは2交代か3交代制で24時間稼働させている。限られた社員数で生産規模を広げず経費節減に努め、現社員で最大限の業績を上げられるよう意識改革を進めた。
 ただ、製造業は「3K」の印象が強く採用希望者は減少傾向にあり、求人は増えている。福島労働局が発表した昨年12月の有効求人倍率で、原発事故の影響が大きい相双地区全業種の求人倍率は2・32倍と3カ月連続で2倍を超えた。自助努力にも「限界」がある。

 毎月最後の金曜日に仕事を早く切り上げる「プレミアムフライデー」が2月24日に始まった。製品は顧客が希望する納期に合わせて生産しており、金曜日の午後3時に製造ラインを止めると週明け早々の納期に間に合わない。このため、社員は通常勤務を続けた。
 政府は働き方改革で労働時間の短縮や残業の上限などを打ち出す方針で、達成できなければ会社が責任を問われる。社員のためにも工夫は続ける。
 人が集まりにくい以上、社内教育を進めるしかないが、そのためには技術力を高める業界団体などの各種セミナー参加が欠かせない。割高な費用は自社負担で、多くの社員を参加させるのは難しい。高山は「若手社員に技術を継承し一人前に育てるには費用がかかる。人材育成のための(国などの)支援があれば」と願う。

   ◇   ◇ 

 震災と原発事故から11日で丸6年となる。避難区域をはじめ県内では復興を支援する国の制度や政策にひずみが出ている。現実の変化に対応が遅れ、見通しの甘さを指摘する声もある。県民の訴えは届くのか。現場を追った。(敬称略)

カテゴリー:復興を問う-震災6年の現実

「復興を問う-震災6年の現実」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧