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待ち望む本格操業 松原広三さん 56 ~いわき市小名浜~

船を出す喜びを胸にかじを握り、本格操業再開を待ち望む松原さん

 東日本大震災で発生した大津波から愛船を守ろうと「大徳丸」で沖に出た。迫り来る大津波を乗り切った。九死に一生を得たが、港町は壊滅的な被害を受け、東京電力福島第一原発事故で漁は自粛に追い込まれた。いわき沖では震災と原発事故から3年後の平成26年春、ようやく柱としていたコウナゴ漁の試験操業が始まった。

 漁の本格操業の再開を目指す試験操業は現在、週2回にまで増えた。原発事故の前に比べると操業時間や水揚げ量は比べものにならないほど少ない。だが、漁にも出られず陸(おか)でもんもんとしているより、命を懸けて守り抜いた船で漁に出られるだけまだ、ましだ。

■『消えない風評』
 26年夏にシラス、27年1月にはサヨリの試験操業が始まった。今年2月にはコウナゴの入札再開が決まり、近いうちにいよいよ競りも始まる。良い型の魚を水揚げして高値を付けたい。入札があるのとないのでは、気持ちの張り合いが違う。
 船を下りて岸壁に立って街を眺めると、よくぞここまで復興したなと実感する。損壊した魚市場などの建物は新しくなり、震災直後はしんと静まりかえっていた港町の光景がうそのようだ。
 その半面、本格的な出漁は本当に再開できるのだろうかと時々、不安がよぎる。原発の廃炉作業のトラブルや汚染水処理を巡る問題がニュースで流れるたびに「またか」と思い、「風評が消える日はやって来るのだろうか」と暗い気分になる。


■『夢を追う』
 震災前は妻、長男、次男の一家で漁業に携わっていた。今、妻と長男は漁業とは関係のない仕事に就いている。以前のように食卓を囲みながら1日の漁の話で盛り上がることはほとんどなくなってしまった。本格操業が再開すれば、また震災前の食卓に戻るのではないか。淡い期待を抱いている。
 うれしいこともある。一緒に試験操業に出ている26歳の次男の腕前が上がっていることだ。漁に出るたびに成長の跡を実感する。本人なりに努力と工夫を重ねているようだ。
 夢は息子たちと一緒に他のどの船にも負けない量の魚を取ることだ。そしていつかは自分を超える漁師に育ってほしい。その日が訪れるのを心待ちにしながら、かじを握り続けたい。

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