県民健康調査の甲状腺検査では、県内の地域ごとの所見の頻度についても分析していると聞きました。東京電力福島第一原発がある浜通りではやはり甲状腺がんなどの割合が高いのでしょうか。
【回答者】県放射線健康リスク管理アドバイザー・長崎大原爆後障害医療研究所教授 高村昇さん
■発症頻度 全域ほぼ同じ
県民健康調査では「基本調査」として、事故直後から4カ月間の外部被ばく線量を推定しています。現在までに県民の約28%に当たる56万5000人余りの方が回答していますが、回答内容を解析した結果、会津地域や南会津地域の推定外部被ばく線量はそれぞれ0.2と0.1ミリシーベルトであったのに対して、避難区域を含む相双地域や県北地域、県中地域の推定外部被ばく線量はそれぞれ0.8、1.4、1.0ミリシーベルトとやや被ばく線量が高い傾向にあります。
ただ、いずれの地域でも外部被ばく線量は極めて限られており、健康影響を及ぼすような線量では全くありません。
一方で、県民健康調査で行われている「甲状腺検査」のうち先行検査で甲状腺がんあるいはその疑いと診断された方の発症頻度を地域別に比較したところ、避難区域等の13市町村(田村市や伊達市、川俣町、飯舘村を含む)で10万人当たり33.5人、中通りで38.4人、浜通り(避難区域以外のいわき市、相馬市、新地町)で43.0人、会津地方で35.6人と甲状腺がんの頻度はほぼ同じであり、少なくとも事故当時に東京電力福島第一原発の近くにいらっしゃった方に甲状腺がんが多いということはありません。
今後も、放射線被ばくと甲状腺がんとの因果関係を明らかにするには、単純に発症数を見るのではなく、このように地域ごとの発症率を比較したり、事故当時の年齢と甲状腺がんとの関連を検討することが大切です。
(カテゴリー:放射線・放射性物質Q&A)