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NPO法人かーちゃんの力・プロジェクトふくしま 古里帰還 茶屋に幕

慣れ親しんだ「あぶくま茶屋」で弁当の仕込みをする渡辺さん(左)と細杉さん

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後、県産食材の安全性や魅力を県内外で紹介し、風評の払拭(ふっしょく)に努めてきた。今年春、多くのメンバーの古里で避難指示が解除されるのを受け、今月末で福島市松川町の「あぶくま茶屋」を拠点としたこれまでの活動に幕を下ろす。故郷に戻るメンバーは培ったノウハウや人脈を生かし、郷土の食文化再生の力になりたいと意欲を新たにしている。

 「あぶくま茶屋」では10日もメンバーが手際よく弁当作りを進めた。消費者の笑顔を浮かべながら愛情を込めて食材を調理した。

■『安全へのこだわり』
 活動が始まったのは原発事故から約8カ月後の平成23年11月。住み慣れた古里から避難を余儀なくされた飯舘村、葛尾村、川俣町山木屋、浪江町の女性たちが集まり、前身の「かーちゃんの力・プロジェクト協議会」を発足させた。独自にモニタリング基準を定め、食の安全と安心を前面に出しながら地元食材にこだわった商品を送り出した。
 避難者と地域住民が交流するイベントで郷土食を販売し、仮設住宅へは弁当を配達した。避難者が手掛けた手芸品を全国の支援者に届けるなど工夫を凝らした取り組みを重ねた。沈みがちだったメンバーに次第に笑顔が戻った。
 苦境に負けない姿は県内外で共感を呼んだ。27年に県農業賞(集団活動部門・農村女性活動の部)、28年に福島民報社の第1回ふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞)の銀賞を受けた。中心を担ってきた渡辺とみ子さん(63)=飯舘村=は「ゼロからのスタートだった。泣いたり笑ったりしながら、ここまでよくやってこられた。同じ被災者を支えようとする仲間を見て勇気づけられた」と振り返った。

■『転機』
 ピーク時は二十数人いたメンバーは現在9人。避難指示の解除などに伴い、それぞれの道を歩み始めた。仲間が減るのは寂しいが、元の暮らしに戻る通過点にしなければ-。これまでの経験を古里に還元しようとアイデアを温めている人もいる。
 残っているメンバーの多くは飯舘村に住んでいた。細杉今朝代さん(61)は避難指示解除後に村内に戻って、住民が交流するサロンを開設する考えだ。「帰還した人たちが気軽に集えるお茶飲みの場をつくりたい。勉強させてもらったことを生かして地域に恩返しする」と夢を描いている。
 避難先にとどまる人もいる。渡辺さんもその1人。「郷土食を次の世代に残したいという思いは変わらない。お互いの活動を支え合うなど、つながった縁を大事にしたい」と願う。メンバーは残りわずかとなった活動期間も変わらぬ心でおふくろの味を提供し続ける。

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