東日本大震災

「福島第一原発事故」アーカイブ

  • Check

震災の無念を胸に介護継続 南相馬・小高の大井千加子さん

「いろは」の室内でスタッフと打ち合わせする大井さん(左)

 南相馬市小高区の大井千加子さん(56)は、要介護度の重い人も利用できる地域密着型通所介護施設「デイサービスいろは」を小高区大富に開所させた。東日本大震災の津波で大勢の利用者らが犠牲になった市内原町区の介護老人保健施設「ヨッシーランド」の入所棟介護長を務めていた。震災から7年がたつ今も救えなかった無念さは消えない。介護を通じて被災地を元気づけることが、亡くなった人に報いることになると信じて前を向く。

 あの日、強い揺れの後、100人の入所者と30数人のデイサービス利用者は全員、外に避難した。大井さんらは津波を心配して5、600メートル離れた県立テクノアカデミー浜に利用者と避難中、津波にのみ込まれた。利用者36人と職員一人が犠牲になった。
 震災後数年は当時のことを話すたびに手が震えた。泥まみれの利用者を抱き起こした時の重さが両手によみがえる。震災に関連する記事や映像に心身が反応し、涙が出る。生きる意味を見失いかけ、転職も考えた。
 それでも介護の道にとどまった。ヨッシーランドの利用者との、宝物のような思い出が胸に残ったからだ。気遣いや感謝、激励の言葉をもらった。心を通わせ、支え、支えられた。「本当に大好きな人たちばかり。今も、背中を押してくれているのかもしれない」と穏やかな表情を浮かべる。
 「いろは」は要介護1~5の人が対象となる。寝たきりの人も歓迎する。送迎付きで、入浴支援や栄養指導などを行う。南相馬市だけでなく隣の浪江町のお年寄りも受け入れる。
 室内に入ると「施設」というより「家」のような落ち着いた空間が広がる。大井さんは「利用者を家族のように、心の安全まで守る」と誓う。それが37人への恩返しになると信じている。

カテゴリー:福島第一原発事故

「福島第一原発事故」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧