被爆地・広島で天皇、皇后両陛下は、高齢の被爆者に顔を寄せ、その声に耳を傾けられた。原爆の惨禍と戦後も続いた苦難の歩みに、天皇陛下は「大変でしたね」と言葉をかけた。
19日午後3時前、気温30度を超え、強い日差しが注ぐ中、陛下は黒いスーツ姿で広島市の平和記念公園にある原爆慰霊碑へ進み、一礼してテッポウユリなどの白い花束を手向けた。「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」。碑に刻まれた誓いの言葉に目をやり、深々と拝礼した。
両陛下はその後、原爆資料館で92~94歳の被爆者3人と面会し、それぞれの話を聞いた。爆心地から約3・5キロ離れた自宅で被爆した笠岡貞江さん(92)は、両親を亡くし、その後は生活が困窮したことを伝えた。
懇談の場には、被爆者本人の体験を語り継ぐ「伝承者」も加わった。笠岡さんの体験を受け継ぐ大河原こころさん(35)に、陛下は「心に残っている言葉はありますか」と尋ねた。隣にいた笠岡さんは「自分が話せなくなっても、これからずっと伝えてくれる人がいて幸せ」と語った。