X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

熊本城(1月19日)

2022.01.19 09:15

 福島市の詩人和合亮一さんに「熊本城」という作品がある。〈人々の心に/いつもある/名城こそは/熊本にある〉。地震の被害に見舞われた熊本県民は古里のシンボルを見上げ、復興に向かう。その心情に思いを寄せ、エールを送ったのだろう▼熊本城の天守閣は、一八七七(明治十)年の西南戦争直前に焼失した歴史を持つ。再建の機運が盛り上がったのは約八十年後で、第二次世界大戦後のことだった。戦禍から立ち直るため、心の拠[よ]り所として市民が熱望したに違いない。寄付が集まり、一九六〇(昭和三十五)年に復元された。熊本地震で被害を受けたが、復旧作業が再び進められている▼震災と原発事故から丸十一年となる今年三月十一日、福島県民が熊本城を訪れる。福島空港-熊本空港間を相互に行き来するチャーター便が運航されることになった。福島に降りる熊本県民は双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館などを巡る▼和合さんの詩は、〈どんなことがあっても/城は毅然[きぜん]と立つ/人々も負けずに/熊本に立つ〉と続く。苦難を乗り越え、前を向く福島県民に相通じる。互いに歩んだ道のりに思いをはせる時、絆はさらに強まるはずだ。