新型コロナウイルスのオミクロン株による第6波が猛威を振るう中、ワクチンの3回目接種を巡り、福島県民が希望するワクチンの種類に偏りが生じることが懸念されている。各市町村の予約や意向調査で、過去2回接種したのと同じ米ファイザー製ワクチンを求める傾向が強いためだ。ただ、国から本県に3回目分として供給されるうちの5割超は米モデルナ製となる。1、2回目と異なるワクチンを打つ「交互接種」が進まなければ接種計画が滞る恐れがある。県は市町村と連携し、交互接種の理解浸透に向けて県民への呼び掛けを強める。
ワクチンの3回目接種について、県は2回目からの接種間隔を、今月は65歳以上の高齢者で1カ月前倒しの7カ月、3月以降は高齢者で2カ月前倒し、64歳以下で1カ月前倒しとする方針だ。前倒しは交互接種の円滑な実施が前提となる。
4月までに高齢者や64歳以下の県民合わせて約116万人が接種対象となる一方、国から供給されるファイザー製のワクチンは54万4088回分にとどまり、まかない切れないのが現状だ。モデルナ製の供給量は67万8645回分で全体の56%を占める。県内の過去2回のワクチン接種者の約94%がファイザー製を接種しているため、円滑な接種率向上にはモデルナ製を活用した交互接種が必須となっている。
県内各市町村で高齢者への3回目接種が本格化する中、既にファイザー製への希望が集中している事例が出始めている。3日に高齢者への3回目接種を開始したいわき市では、2日時点の3月6日までの予約枠は主にファイザー製を使う個別接種が全て埋まったのに対し、モデルナ製を使用する集団接種は8600人分のうち1600分(18・6%)が空いたままだ。
さらに、3月7日以降の予約について、募集初日の4日午後5時時点でファイザー製は6700人分の約半数が埋まったが、モデルナ製は1万1千人分の約5%にとどまる。市保健福祉部の担当者は交互接種への抵抗感の可能性を指摘し、「ワクチンの種類よりも早期接種を優先してほしい」と話す。
県新型コロナ対策本部はオミクロン株による県内の感染者の多くがワクチンを2回接種している現状から、一定期間が過ぎて低下してきた免疫力を3回目接種で再度高める必要があるとみている。
厚生労働省はモデルナ製の使用を推進するため、ファイザー製を2回接種した人について3回目接種がファイザー製でもモデルナ製でも十分な効果があるとの海外での研究データを紹介している。県はこうした情報を各市町村の担当者に繰り返し説明し、住民の相談に的確に応えられる体制を構築する。