東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に伴う県内外への避難者数は2月現在、3万3365人と前年の2月から2338人減少した。最も避難者数が多かった2012(平成24)年5月の16万4865人の約20%となり、減少傾向が続いている。
県がまとめた県内外への避難者数と仮設住宅の入居者数の推移は【グラフ(1)・(2)】の通り。2月現在の避難者の内訳は県外が2万6692人、県内が6668人、避難先不明者が5人。県外避難者は46都道府県におり、施設別で見ると2月8日現在で公営や仮設、民間賃貸などの住宅への避難者が1万2965人、親族や知人宅などに身を寄せている人が1万3570人、病院などは157人だった。県内の仮設住宅の入居者数は2月末現在、郡山市に3戸4人となった。
住民の帰還や災害公営住宅の整備が進んだ点などから、避難者の減少につながっているとみられる。仮設住宅の撤去や自主避難者への住宅の無償提供の打ち切り、家賃補助制度の終了なども背景にある。
県はアパートなどの借り上げ住宅や仮設住宅について、大熊、双葉両町からの避難者への無償提供を2023(令和5)年3月末まで延長している。
■災害公営住宅 入居戸数減少傾向古里帰還増加か
原発事故に伴う避難者向けの災害公営住宅は3月1日現在、整備計画の4890戸のうち、4767戸が完成している。計画戸数に占める完成戸数の割合「進捗(しんちょく)率」は約97%で、完成戸数のうち入居済みは3997戸、入居率は約84%となっている。
計画戸数のうち、未着工の123戸は入居希望者の減少などを受けて整備を保留している。保留中の123戸の建設先の内訳は、いわき市が72戸、整備地区未定が51戸となっている。
県によると、災害公営住宅の入居戸数は近年、減少傾向が続いている。県土木部建築住宅課は減少の要因として、避難指示の解除や帰還者向け災害公営住宅の整備が進んでいることなどを挙げる。退去者に占める帰還者の割合は不明とした上で、「古里に戻る人が少しずつ増えている可能性があるのではないか」としている。
災害公営住宅を管理する自治体には、避難者からの需要減などを受け、入居対象を広げる動きもある。本宮市は浪江町からの避難者のみを受け入れていたが、1月から避難区域に一時設定され、既に解除された地域を含む12市町村の避難者に対象を広げた。桑折町は昨年3月、64戸のうち9戸の用途を変更し、子育て世代向けの定住促進住宅として活用している。
■任意性 両立課題 受けやすさ 甲状腺検査5巡目 調査委、在り方検討
原発事故の健康影響を調べる「県民健康調査」のうち甲状腺検査は五巡目が続いている。自らの意思で受検するかどうかを選ぶ「任意性」の確保と、検査の受けやすさをどう両立するかが課題となっている。
1~5巡目の検査と、25歳時の節目検査を合わせると、がんの確定は221人、がんの疑いは44人となっている。五巡目の検査は新型コロナウイルス感染拡大の影響で遅れが出ている。
甲状腺検査は学校の授業時間に行われる場合が多く、希望しない人まで受けてしまう可能性があるとの指摘がある。一方、学校が会場であることが検査の受けやすさにつながっているとの声もあり、県民健康調査検討委員会が検査の在り方を検討している。
一巡目検査の開始から11年目を迎え、学校を卒業して親元を離れて暮らす人も増えている。こうした人が検査を受けやすい環境をどう構築するかも課題だ。
同検討委の甲状腺検査評価部会は三巡目までの検査について、検査のがん発見率と被ばく線量の関連性を詳しく調べている。これまでは国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が県内59市町村ごとに推定した甲状腺被ばく線量を基に評価してきたが、より精緻に評価するため、患者個人の推計被ばく線量(甲状腺等価線量)のデータを踏まえる方針だ。
■残り14工区2020年代前半完成へ ふくしま復興再生道路
県は道路網整備で復興を後押しするため、中通りと浜通りを結ぶ国道と県道の計8路線を「ふくしま復興再生道路」と位置付け、道路のバイパス工事や拡幅などを進めている。全29工区のうち、2021(令和3)年度は浪江町の114号国道浪江拡幅2工区、いわき市の県道小野富岡線小白井工区、田村市の349号国道新舘工区が完成し、これまでに15工区で整備を終えた。残る14工区については2020年代前半までの完成を目指す。
114号国道浪江拡幅2工区は約0・5キロで、昨年3月2日に開通した。幅を広げ、安全でスムーズな通行が可能となった。県道小野富岡線小白井工区は約2・7キロで、昨年3月25日に全線開通。幅が狭く危険だったが、バイパス化により、安全に通行可能となった。349号国道新舘工区は約0・8キロで、昨年9月3日に開通し、道路拡幅や交差点改良などを行った。
工事が完了していない14工区は全て工事中となっている。
八路線の開通により、原発事故に伴う避難区域や周辺での広域的な物流が円滑化し、産業や医療などの多方面への波及効果が期待される。
■関連死2331人 前年比 11人増3月7日時点
震災と原発事故に伴う避難の影響で体調を崩すなどして死亡し、「関連死」と認定された県内の死者は3月7日時点の県の集計で、2331人に上る。前年同期の2320人から11人増えており、震災と原発事故から11年を迎えようとしている現在も、長期避難による心労などが被災者を苦しめている。
県内の関連死は県の集計上、2013(平成25)年12月に地震や津波による直接死を上回った。今年3月時点で(1)直接死(2)関連死(3)遺体は見つかっていないが、死亡届が出された人-を合わせた全死者数4162人の56%を占める。
関連死は南相馬市が520人で最も多く、富岡町が454人、浪江町が441人で続いている。原発事故で避難指示が出るなどした12市町村(双葉郡8町村、南相馬市、田村市、川俣町、飯舘村)が2119人と、全体の90・9%に上る。
地震や津波による直接死の死者数は1605人で、全死者数に占める割合は38・6%。南相馬市が最多の525人、相馬市が439人、いわき市が293人で続いている。
厚生労働省の集計によると、震災に関連する県内の自殺者は今年1月末までに119人に上る。震災の被害が甚大だった岩手県の55人、宮城県の62人のほぼ2倍に当たり、被災3県でも突出している。
震災に関連する県内の自殺者が年間で最多だったのは2013年の23人。2020(令和2)年は3人、2021年は1人で、今年は把握されていない。