連日県内最多の新型コロナウイルス感染が確認されている福島県郡山市で、保育所や幼稚園など幼い子どもが集う施設のクラスター(感染者集団)が昨年に比べて急増している。昨年1年間で1件だった市内の保育所や幼稚園のクラスターは今年に入り、既に32件となった。今月発生した市内保育所の50代所長が19日、福島民報社の取材に応じた。鼻水やせきなどを「子どもにありがち」な症状と捉えたため、子どもたちに症状がありながら登園していた実情などを指摘。今後は保護者と一層協力し、感染拡大防止に努める決意を示した。
所長が勤務する保育所では0~5歳の乳幼児を預かっている。今月1日に抗原検査で園児1人の感染が判明した。2日には、さらに園児5人の陽性が確認され、クラスターと認定された。市保育課と相談し、感染者と接触があった園児と職員全員のPCR検査を3日に実施。クラスターは30人以上に拡大した。2日から8日まで休所を余儀なくされた。
所長は「正しいマスクの着用や友達との距離確保を幼い子どもに求めるのは難しい」と指摘する。その分登園時の検温、消毒や換気など対策は徹底したという。市内の別の保育所で昼食中に感染した例を踏まえ、半年ほど前から職員と園児が別の部屋で食事を取るようにした。「出ないように、広がらないように」。職員全員が同じ意識で園児と接していた。
だからこそ、園児、保護者への申し訳なさと、「どうして…」という思いがこみ上げた。感染者には、小学校入学を前に3月末まで預かっていた卒園児も13人いた。「入学式に参加させてあげたかった」と振り絞るように語った。
新型コロナ以外の原因で発熱や鼻水、せきの症状が出る子は少なくない。クラスター発生後は、体調不良の電話を受けた際や朝の登園時に、保護者から子どもの体調を入念に確認するよう努めている。症状がある場合は感染の可能性をまず疑い、通園自粛と病院での受診を呼びかけている。
登園してきた子供を追い返すようで、心苦しさを感じる時もある。仕事を簡単に休めない保護者も多いと理解している。ただ、クラスターが発生した後も、園児6人の陽性が確認された。「保護者との信頼関係を深め、感染を食い止めたい」。対策の模索は続く。