第104回全国高校野球選手権大会の決勝で仙台育英(宮城)が下関国際(山口)を破り、深紅の大優勝旗は初めて「白河の関」を越えた。福島県白河市の白河関跡ではパブリックビューイングが行われ、関係者が悲願達成の瞬間を万感の思いで見守った。仙台育英と準決勝で戦った聖光学院のナインは「次こそ福島県に優勝旗を持ってきてほしい」と後輩に願いを託した。
「東北に新たな風が吹いた」。白河市の鈴木和夫市長は試合後、市内で行われたパブリックビューイング会場で満面の笑みを浮かべた。地元住民ら約80人が詰めかけ、関跡入口に設置された大型スクリーンで試合を見守った。県南野球連盟会長の小坂井孝博さん(65)は「磐城高準優勝の時に感じた悔やしさがようやく晴れたような思い」と喜んだ。
白河神社の西田重和宮司(74)は「悲願が達成でき、感無量」と満足そうだった。20数年間にわたって甲子園に出場する東北6県の代表校に、東北勢初優勝を願って白河の関の通行手形などを送ってきた。今後も続けていくという。
仙台育英と甲子園で準決勝を戦い、敗れた聖光学院。赤堀颯主将(3年)は試合直後に仙台育英ナインに「頼んだ」と声をかけ、東北の悲願を委ねた。切磋琢磨してきたライバルの初優勝を喜びつつ「後輩には、聖光を甲子園の常連校から常勝校にしてほしい」と後を託した。
1971(昭和46)年夏に準優勝した磐城のメンバーも快挙をたたえた。当時中堅手だった県高野連顧問の宗像治さん(69)は「東北の悲願を達成してくれた」と仙台育英ナインを称賛した。一方、「次は県勢の初優勝を期待する」と球児の奮起を促した。
当時主戦だった田村隆寿さん(70)=水戸市=は「攻撃力、投手力を備えた優勝に価するチーム。東北全体が待ち望んでいた」と祝福した。「本当は聖光学院に勝ってほしかった」と、かつて指揮した高校の奮闘もたたえ、「2番目でも良いので頂点を目指してほしい」と県勢に期待した。
東北地区高野連理事長で県高野連理事長の木村保さん(52)は「感動をありがとうと伝えたい」と感激した様子だった。「東北の各チームが切磋琢磨(せっさたくま)してきた結果だと思う。県内球児の大きな刺激となった」と評価した。