福島県は新型コロナウイルス感染で県内の医療機関に入院していた5人の死亡と、2612人の新規感染を確認したと16日、発表した。県が平常時に確保している病床760床の使用率は15日現在、73・9%(前日比5・7ポイント増)となり、8月28日発表分以来80日ぶりに70%を超えた。病床が不足する恐れのある水準に達しつつあるが、早急な増床は困難で、県や医療関係者は感染対策の徹底を求めている。
政府対策分科会は病床運用の限界を80%程度としている。小児や妊産婦ら特定の患者の他、症状が悪化した自宅療養者らを受け入れる病床を空けておく必要があり、入退院の手続きにも時間を要するためだ。
県は新たな病床確保を目指して医療機関に働きかけている。だが、医療機関は通常医療に必要な病床を一定程度確保しなければならず、コロナ対応の病床を設けるのは難しい側面がある。
県内の1日当たりの新規感染者数は2日連続で2500人を上回った。10代を中心に幅広い年代で増加傾向が続き、医療提供体制は逼迫(ひっぱく)の度合いを急速に増している。
郡山市の総合南東北病院は10月下旬からコロナ患者の入院が増え始めた。40床を確保しているが、すでに8割は埋まっている。発熱外来の受診者も増え続けている。
入院患者の多くは高齢者だ。心臓などに持病があり、感染による体力低下で誤嚥(ごえん)性肺炎を発症し、入院するケースが多くを占めているという。外科医長の藁谷暢(みつる)医師(44)は「感染がさらに拡大すればコロナ病床が足りなくなり、受け入れが困難になる」と危機感を募らせ、「マスク着用、手洗い、換気、ワクチン接種など基本的な感染対策を徹底してほしい」と訴える。
県は17日、新型コロナ対策本部員会議を開き、安定的な医療提供体制の確保や感染拡大防止に向けた対応を検討する方針。