波動砲がさく裂すると、胸は高鳴った。深淵[しんえん]な世界を旅する列車は想像力をかき立てた。「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」-。無限の空間にいざなってくれた松本零士さんが亡くなった▼放射能に汚染された地球を救おうと、古代[こだい]進は除去装置を手に入れるため、戦艦ヤマトに乗り込んだ。「地球滅亡まであと何日」。残日数は回を重ねるごとに減っていく。地球を守らねば、との強い気持ちが子ども心に芽生えた記憶がある。機械伯爵に母を殺された星野鉄郎は、永遠の命を求めて銀河を旅し、生命の大切さを教えてくれた▼郡山市ふれあい科学館名誉館長や県しゃくなげ大使として県民と身近に接した。震災と原発事故発生後は郡山市を訪れ、「天災、人災を乗り越え、自らの夢を実現させて」と励ました。「宇宙に行って、この目で見た本物の地球を描く」と、自らの夢も熱く語っていた▼核戦争や気候変動などの脅威に基づく米誌の終末時計は今年、人類滅亡まで残り90秒とされた。秒針を止め、巻き戻す戦艦ヤマト真骨頂の続きを今こそ見たかった。どんな思いを残して旅立ったのだろう。♪さらば地球よ-の主題歌のフレーズがやけに胸に染みる。