8日の新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けの5類移行に伴い、感染対策に関する省庁や関係団体のガイドラインは廃止され、原則的に陽性者の行動制限もなくなった。観光地や宿泊施設の多くは感染拡大を防ぐための対策を継続するが、観光客らに強制はできないため、状況を見極めながらの対応が続く。宿泊業界ではコロナ禍の影響で人手不足が深刻だ。国や福島県の旅行支援で回復基調にあるとはいえ、関係者は支援策の継続を求める。
■連日にぎわい
大型連休最終日の7日、県内全域で雨が降ったが、観光地には多くの人が訪れた。4月28日に天守閣がリニューアルオープンした会津若松市の鶴ケ城公園は期間中、連日にぎわった。7日の人出は約1700人と天候の影響もあり前日の4分の1ほどだったが、台湾を中心に訪日客の姿も目立った。
人の波が戻る中、関係者は5類移行後の対応を模索してきた。市は鶴ケ城などの観光施設で検温器や消毒液の設置を続ける方針だ。担当者は「マスク着用は既に個人の判断だが、使い続けている人が多い。検温器などを設置した方が安心感につながる」と話す。
市内の東山温泉の原瀧は全スタッフがマスクを着用していたが、移行後は接客担当に限定し、フロント係は例外とした。総支配人の平賀茂美さん(68)は「お客さまに『このホテルはマスク着用が必要だ』と無言の圧力を与えないようにしなければならない」と気を使う。
■厳しい経営
いわき市のいわき湯本温泉の吹の湯旅館では、連休中も団体客の受け入れや宿泊を問い合わせる電話が鳴り続けたが、予約を断ることもあった。
今は人手不足が悩みの種だ。これまでは20人以上の団体客を断り、47室のうち十数室を食事部屋として使ってきた。15人ほどいた客室担当の従業員は8人になった。若女将(おかみ)の若松久美子さん(48)は「対応できる従業員が足りないため、満室にはできない」ともどかしさを募らせる。
今後、人の往来はさらに活発になると予想されるが、観光・宿泊関係者は楽観視していない。事業継続のため多額の借金を余儀なくされた旅館・ホテルは少なくないためだ。県内のホテル関係者によると、全国で債務超過となった施設数は2019年度は約26%だったが、2021年度は約1・5倍の約38%に増えたとする業界団体の調査があるという。「宿泊客は増えたが、売り上げは期待したほどではない。先行きが明るいとはまだ感じない」と打ち明ける。
観光業界を支援する政府事業の全国旅行支援は今後も続くが、県は予算額が上限に達したため「福島県『来て。』割」の予約受け付けを終了した。浜通りの旅館経営者は「国や県には、需要回復の起爆剤となるような施策を継続してほしい」と訴える。