憎らしいほどの存在感だ。ＮＨＫ大河ドラマ「どうする家康」で、織田信長は絶対王者の風格を示す。俳優岡田准一さんは、はまり役と言っていい。片や、同盟関係を結ぶ徳川家康は押されっ放しだ。主人公なのに、どうも情けない▼権力争いの行方は神のみぞ知る。ご存じのように、信長は家臣の明智光秀に足をすくわれる。その光秀も、天下に一度足をかけた豊臣家も滅ぶ。最後に笑ったのは―。令和のテレビで、頼りない地方の殿様として描かれている家康その人だった▼内閣不信任案を一蹴し、心に余裕ができたのか。岸田文雄首相は母校の早稲田大で講演し、「回り道の連続だった」と歩みを振り返った。「何が起こるか分からない時代だ。希望と好奇心を持って」と後輩にエールを送ったという。本人は学生時代、想像できたのだろうか。自分が将来、宰相の座に上り詰めると▼首相はいっとき、総選挙に陣を敷く構えをにおわせた。今国会はきょう、会期末を迎える。政局は秋へ、の観測も。西で勢いを伸ばし、東へ攻め込む勢力もある。友党とは、少しばかり隙間風もあるような…。足元は盤石とは言い難いようにも見えるが、どうする岸田さん。＜２０２３・６・２１＞