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脱帽(4月26日)

2025.04.26 09:09

 終戦の年の冬、国内の食糧事情は深刻で、命の危機もささやかれた。農林省は450万トンが足りないと試算し、数百万人が餓死するとの報道も出た▼当時の外相吉田茂はGHQにかけ合ったが、提供を受けたのは70万トン。要求のわずか15%ほどだが、食べ物が手に入らず亡くなる人が続出する事態は避けられた。最高司令官マッカーサーは吉田に詰め寄る。「君は僕に嘘[うそ]をついたね。日本の統計はでたらめだ」(統計局ホームページ)▼今度は日本が米国に数字の不確かさを問う番だ。トランプ大統領はわが国が輸入米に700%の高関税率を課していると批判した。どうも根拠はあいまいだという。日本側は客観的なデータを基に、実際は200%程度と反論している。各国に課すとした相互関税率もどう算出されたのか判然としない。打算の「ふっかけ」なら、大国の信頼は地に落ちる▼吉田は歴史に名を残した。戦勝国にひるまずに向き合い、自国の立場を堂々と主張したからこそだろう。現代の交渉役はホワイトハウスで赤いキャップを頭に、どこか悦に入った表情を浮かべた。早くも軍門に下った訳ではあるまい。難敵を説き伏せられたら、脱帽なのだが。<2025・4・26>