東日本大震災アーカイブ

首相、もう帰るのか 避難者厳しい声 「原発、一刻も早く収束を」

 「もう帰るんですか」。葛尾村から避難している建設業の東海林富司夫さん(51)と妻みゆきさん(51)は、田村市総合体育館の避難所で菅直人首相の背中に、いらだつ思いをぶつけた。
 「そういうつもりはない。申し訳ない」。首相が引き返してわびると、みゆきさんは語気を強めて訴えた。「生後四カ月の子どもを抱え、どんな気持ちか分かりますか」  続く言葉は涙で震える。「ここにいる人たちは先の見えない不安を抱えている。原発を早くなんとか抑えてほしい」    ◇  ◇  菅首相が21日に訪れた各地の避難所では、避難者らから厳しい声が次々と上がった。
 「菅総理、1日も早い原発の収束をお願いしたい。言いたいことはもっともっとあるが、私たちは我慢している」。田村市総合体育館では、首相に詰め寄る郡山市の男性高校教諭の姿も。
 「東電が工程表を発表した。一刻も早く収束できるようにしたい」。菅首相はそう答えるだけだった。
 大熊町から避難し、館内で炊き出しのボランティアをしている木幡和明さん(52)は「もう少し早く来てほしかった」と苦言も呈した。
 郡山市のビッグパレットふくしまでは、川内村から避難している村議渡辺一夫さん(67)が14日に撮影した満開の富岡町夜ノ森の桜並木の写真を首相に手渡した。例年とは違い、誰一人いない光景を示し「来年はまた、人であふれる町になるよう努力してほしい」と求めた。
   ◇   ◇  「福島のことを考えているつもりだったが、まだまだだった」。菅首相はビッグパレットふくしまの避難所を訪問後、記者団に明かした。「一番の望みは早く帰りたいということ。住民が将来への希望を失わないよう、あらゆることで地元の声を聞き、対応を約束した」とも語った。

カテゴリー:福島第一原発事故