東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者(58)は福島第一原発に残る溶融燃料(燃料デブリ)の取り出しに不可欠な原子炉建屋の内部調査の進展に向け、放射線の影響を受けやすい半導体を極力用いない水圧制御などの調査技術開発を検討する考えを示した。26日までに福島民報社のインタビューで明らかにした。
■廃炉推進カンパニー 増田最高責任者に聞く
-原発事故から間もなく6年になる。福島第一原発の現状は。
「震災直後と比べて現場の体制が整ってきた。この1年は特に作業環境の改善が進んだ。汚染水の処理に加え、廃炉の『核心』である燃料の取り出しに向けた土台ができた」
-今月実施した2号機の一連の調査では、燃料デブリの実態をつかめなかった。政府と東電は今夏に取り出し手法の方針を決める計画だが、可能なのか。
「2号機の調査では多くの情報が取れたと感じている。今後、さらに詳しく判明すれば、より精緻な方針が決められる。今回はロボット調査の前に投入したガイドパイプ式のカメラで圧力容器直下部分の画像を撮影できた。ロボットという方法にこだわらず、臨機応変に実態把握を進めたい」
-2号機調査では、高い放射線量とみられる影響でロボットに搭載したカメラに不具合が生じた。
「ロボットやカメラを制御する装置は半導体を用いている。半導体は放射線に弱いため、制御装置を線量の高い場所から遠ざける必要がある。また、半導体を使わない手もある。例えば水圧を用いた制御は有力な手段の一つで、幅広く考えていく」
-タンクで保管しているトリチウムを含む水の取り扱いは。
「最終的には東電が責任を持って決めるべきだと考える。国の検討会の議論を見極め、地元住民の意見を十分に聞いた上で決定したい」
-昨年末、福島第一、第二両原発で冷却機能の停止が相次いだ。
「冷却機能の停止は県民が最も不安に感じる出来事だと思う。深く反省している。注水ポンプのスイッチにカバーを付けるなど物理的な対策を進めつつ、重要な設備と作業員が一目で分かるようにする必要がある」
(カテゴリー:福島第一原発事故)