東日本大震災アーカイブ

県警、懸命の捜索 「みとれるのは俺たちだけ」 浜通りに警官大量投入

集中力を絶やさず緊張して遺体を検視する捜査員

 県警は震災以降、一線署や県警本部から最大限の警察官を浜通りに投入し、行方不明者の捜索や遺体の検視、立ち入り規制などに当たっている。他県警の応援を受けているが、緊張と疲労は極限に近い。放射能という見えない不安も24時間付きまとうが、使命感で未曽有の大災害に立ち向かっている。
 福島第二原子力発電所から半径十キロ圏内に町のほとんどが入る富岡町。小鳥の鳴き声だけが響く。酪農家が避難する際に放したとみられるウシが街中を歩く。機動隊員の一人はその異様な光景が目に焼き付いて離れない。玄関の扉が開いたままの民家に「まるでゴーストタウン。いつになれば元の町並みに戻るのか」。急いで避難した住民の心境を警戒活動をしながら思いやった。
 「想像を絶する世界だった」。殺人など凶悪事件の捜査経験が長い中堅幹部は被災地に着いた時、次々と遺体が運ばれてくる光景に絶句した。幼い子どももいた。現地入り後、休みなしで既に300体余りの遺体と向き合った。
 今受けている放射線量は大丈夫か。今日の風向きは。福島第一原発から半径20〜30キロ圏内で警戒活動をする警察官は放射線量測定器を気にしながらの活動を強いられている。交通規制、捜索、遺体搬送、検視...。通報があれば所在確認などで十キロ圏内にも入る。
 地震発生から三週間がたっても福島第一原発から20キロ圏内の捜索は手つかずの状態。原発の動きが沈静化し近づけるようになれば、大熊町で発見された男性の遺体のように、放射性物質が表面に付着したケースも出てくるとみられている。ただ、高い放射線量を計測した遺体の取り扱い方針も決まり、適正に対応すれば被ばくの危険性もないことで現場の懸念は払拭(ふっしょく)された。
 「これからが正念場」。捜索班や検視班の担当は口をそろえる。マスク一枚で検視に当たる捜査員は「みとれるのは俺たちだけ」と言い切る。別の幹部は「かつてない長期戦になることは覚悟している。応援部隊の増員も必要だが、みんな被災地で任務に当たろうという気持ちになっている」と一枚岩を強調した。

カテゴリー:福島第一原発事故